#826

アンとシンが率いていた兵たちを、そのボディに飲み込んだ宿命の戦車チャリオット オン デスティニー――。


エレメント·ガーディアンを宿やどした無数の大型車輪兵器は、フォクシーレディが手を振ると、彼女たちへとおそい掛かる。


「クソッ! これじゃ手が出せないッ!」


表情を歪めるアン。


その傍にいたシンも同じように、その顔を強張らせていた。


人間の壁――肉の盾を手に入れた宿命の戦車チャリオット オン デスティニーがアンたちを襲っている間に、ローズがフォクシーレディのもとまで下がる。


「趣味が悪いな」


「だって正攻法じゃ厳しいでしょ? でも、あなたの言う通りかも」


フォクシーレディはローズに言葉を返すと、さらに嬉しそうに笑う。


「あたしって、こういう意地悪が大好きなんだよね」


その大きな車輪のボディを回転させて動き回る宿命の戦車チャリオット オン デスティニー


誰も彼もが手を出せないと思われたそのとき、ブライダルがその兵器の前へと出る。


「あのビッチ社長。なんか勘違いしてるなぁ……」


そして青龍刀をにぎったまま、向かってくる宿命の戦車チャリオット オン デスティニーを避けてその側面を斬り裂いた。


当然取り込まれた味方の兵も斬られ、車輪兵器は破壊できたものの、彼らの命までもうばうことになった。


「ためらもなく殺すとは……」


その様子を見て、ローズがポツリとつぶやいた。


その傍では、フォクシーレディが思い通りにいかなかったことに苛立いらだちを隠せずに、その眉間みけんしわを寄せている。


ブライダルにはローズの呟きが聞こえていたのか、血と機械の油を浴びた顔で彼女のほうを振り向く。


「ためらいなく? そんなわけないでしょ?」


ブライダルがそう言いながら襲い掛かって来る宿命の戦車チャリオット オン デスティニーを、取り込まれた兵たちごと斬り裂いていく。


「悲しいよ~。罪のない人たちを殺さなきゃならないなんてさ~。さっきからずっとごめんなさいごめんなさいって心の中で叫んでるんだよね~」


「だよな。オレもブライダルに賛成だ。謝罪の言葉が止まんねぇよ」


そんなブライダルに続いて、エンポリもてのひらオーラまとい、味方ごと車輪兵器を破壊していった。


口では罪悪感を覚えていると言いながらも、ブライダルとエンポリの挙動きょどうや行動には迷いなど一切なかった。


フォクシーレディはそんな二人を見て舌打ちする。


「どうやら正義の味方の中に、頭がおかしいのが混ざっていたようね」


「頭がおかしいなんて酷いな~。まあ、ビッチ社長がノワール展開をやりたい言うなら、いくらでも付き合ってあげるよ」


「ノワールってのよくわかんねぇけど。こんなんで止められると思うなよ。そもそもな。ここいんのが全員正義の味方だと思ってるのがオメデタイ」


宿命の戦車チャリオット オン デスティニーを破壊していくブライダルとエンポリを見て、アンとシン、そしてブレイクとソウルミューは歯がゆい顔をしていた。


だが、すぐに気持ちを切り替えてローズとフォクシーレディを見据える。


「後味が悪いが、今はこれしか方法がないか……。覚悟しろよッ! 彼らの無念は私たちが晴らすッ!」


そして、アンがローズとフォクシーレディに向かって声を張り上げた。

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