#825

フォクシーレディが手を上げると、まるで空に穴が開いたような渦のような空間が現れた。


そして、その空間から次々とモノホイール型の兵器が降りてくる。


「あたしの能力は抹殺戯言キリングジョーク。この力があれば、いくらでも戦力を出せるんだよ」


フォクシーレディが持つ力は、手の平から物体を出す能力――抹殺戯言キリングジョークだとは知られていたが。


どうやらただ銃や刃物などの武器を出すだけではなく、大型の兵器まで出現させることができるようだ。


「さあ、うちの一輪バイクたちにかれるといいよ」


フォクシーレディがいう一輪バイクの名は宿命の戦車チャリオット オン デスティニー――。


全高四.四メートル、全幅一.二メートル、重量は約二。二トンで、大きな車輪のような外観をしていた大型のモノホイールである。


そのタイヤのようなボディには金属製の刃が数えきれないほど付けられており、敵へ向かっていくだけで無差別にしかも大量に生き物を切り刻めるものだ。


当然この兵器もエレクトロハーモニー社の製品で、本来なら三人まで乗車可能だが、何やら様子が違っていた。


「あれはまさかッ!?」


ブレイクが思わず声を荒げた。


その現れた無数の宿命の戦車チャリオット オン デスティニーには、その全体を覆う黒い光のようなものが見えたのだ。


それは、神具を暴走させることで生まれた機械に取りく黒い光――エレメント·ガーディアンだった。


「おいッ! なんでだよッ!? お前たちはあのギブバースと会って試練を乗り越えたんだろッ!?」


「おかしいな~。たしかに私らは試練をクリアしたんだけど?」


「じゃあ、まさかあのビッチ社長がまた儀式をやったのかよッ!?」


「う~ん、どうなんでしょう? 私にはわからんよぉ~」


エンポリがブレイク、ブライダル、ソウルミューに訊ねると、ブライダルが呑気のんきに首をかしげた。


浮足立つ一同に、少し離れたところからシンが声をかける。


「慌てるなエンポリ。俺やブレイク·ベルサウンドの呪いが解けている以上、儀式が行われたわけじゃない」


「でもシン様ッ! じゃああのでかいタイヤに取り憑いてるのは一体なんなんですかッ!?」


そんなやり取りをしていると、宿命の戦車チャリオット オン デスティニーは凄まじいエンジン音を鳴らして動き始めた。


「これだけじゃない、これだけじゃないんだよサプライズはさぁッ!」


フォクシーレディが声を張り上げると、黒い光をまとった宿命の戦車チャリオット オン デスティニーは、その漆黒しっこくの光を広げ、周囲にいるブレイクたちを飲み込もうとする。


全員すぐに距離を取って下がると、そこへアンとシンが率いていた味方の兵たちが現れた。


兵たちは、エレメント·ガーディアンに取り憑かれた宿命の戦車チャリオット オン デスティニーに驚きながらも、持っていた銃火器で応戦したが――。


「ダメだッ!? 皆下がれッ!」


アンが叫んだが時はすでに遅く、味方の兵たちはその黒い光に取り込まれてしまった。


そしてそのタイヤのボディの側面には、取り込まれた兵たちが苦しそうにうめいている状態となった。


「さて、どうする? 世界を救おうっていう正義の味方さんたち? これであたしの製品を攻撃したら、彼らも死んじゃうねぇッ!」

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