#824
「かつての英雄とテロ組織教祖の息子が来てくれたわけだし、そろそろあたしも戦おうかしら」
フォクシーレディがそう言うと、アンは彼女を無視して突然声を張り上げる。
「ロミーッ! もうやめろッ!」
アンの大声にブレイクたちの動きが止まり、ローズは目の前にいた彼らから距離を取る。
そして後退したローズは、まるで虫けらでも見るかの視線をアンへと向けた。
「その名で私を呼ぶな、化石が」
「ロミー……。もういいだろう? これ以上の戦いは無意味だ。いくらお前たちが強かろうと、この状況を見て勝機があると考えるほどバカじゃないだろう」
アンの言う通り――。
現状では、数で押していたエレクトロハーモニー社のドローン隊だったが、予想よりも早く現れたメディスンらの援軍に苦戦。
そして目の前には、ヴィンテージであるアン·テネシーグレッチに、
さらにはどんな重傷を負おうが、正常な状態に治してしまう治癒能力――
体内にある生命エネルギーである
ただの人間ながら的確な射撃と指示が出せるソウルミューら六人を相手に、たとえローズとフォクシーレディが強くとも勝てる見込みは少ない。
「降伏しろ。それとも、お前はこんなところで死にたいのか?」
アンの無表情が崩れ、悲しそうな顔で妹へ語り掛ける。
だが、それでもローズは姉のことを
それがどうしたのだと。
まさかそんな感傷的な言葉をかけたくらいで止められると思ったのかと。
悲しそうに言う姉とは対照的に、小馬鹿にするように笑って返す。
「何年も子守をして自分を誤魔化していた女が、私に偉そうなことを言うな」
「ロミー……」
アンから目を逸らし、再びブレイクたちのほうへ身構えるローズ。
そんな妹の姿に、アンは両目を細めていた。
「ねえちょっと、あたしのこと無視して盛り上がらないでくれる?」
すると、フォクシーレディがその口を開いた。
そして、彼女は両手の手の平を開いたまま左右に伸ばし、その不敵な笑みのまま言葉を続ける。
「でもまあ、一理あるわね。さすがにこの場にいる人間はザコじゃないもの。正攻法で勝つの厳しいわ」
「……何をする気だ?」
アンが訊ねると、フォクシーレディは待ってましたと言わんばかりにさらに口角を上げる。
「だから正攻法以外の戦い方をするのよ」
それからフォクシーレディは、左右に伸ばした腕を空へと上げた。
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