#800

「ラ、ライティングさん……? イヤ……イヤァァァ……みんな、みんな……イヤァァァッ!」


ついに力尽きたライティングが、ローズから手を離し、その場にドサッと倒れた。


それを見ていたウェディングには、もう完全に戦意はなかった。


腕の甲から生やすことができるダイヤの剣すら出さずに、おびえきった表情でローズから後退あおとずってしまっている。


「圧倒的な力の差を見せつけられ、仲間の死を目の当たりしたことで、心が完全に折れたか。もうそれ以上、お前の無様ぶざまな姿を見たくはないな」


ローズは転がっているライティング、トランスクライブ、メモライズの焼死体を蹴り飛ばしながら、ウェディングのほうを向いた。


そして、再び装甲アーマードした腕から電話を放ち始め、その手をウェディングへと向けた。


「今楽にしてやる。再生などできないくらい焼き尽くしてな」


今度こそ止めを刺されると覚悟したウェディングだったが、突然ローズの身体が何者かに吹き飛ばされた。


ウェディングは一体何が起きたのかわからなかったが、彼女もまた先ほどライティングが開けた穴から入って来た陸上艇へと放り投げられる。


「ダイヤの嬢ちゃんッ! さっさと行けよッ!」


「あ、あなたは……ッ!?」


そこには、モジャモジャのパーマ頭のガッチリとした男――。


ハザードクラス――非属ノン ジーナスの二つ名で知られるロウル·リンギングが立っていた。


どうやら彼もリーディンらと共に、この研究施設に捕らわれていたようだ。


「いつまでボケっとしてんだッ! こいつらの覚悟を無駄にする気かッ! 嬢ちゃんが生き残って逃げ出せれば、もうこいつらの勝ちなんだよッ!」


「ロウル……さん」


「わかったらさっさと行けッ! こいつは俺が引き受ける」


ロウルの言葉で我に返ったウェディングは、すでに捕まった仲間たちを回収していた陸上艇のスイッチを入れる。


だがそのときに、トランスクライブとメモライズを追いかけてきた帝国兵たちが、研究施設へとなだれ込んできた。


彼らの先頭に立っていたのは、アバロン、コーダ、ネア三人――ローズ親衛隊だった。


「なんだよここは? 何かの実験でもやってたのか?」


「陸上戦艦の中にこんなところがあったのか。何も聞かされていなかったが……」


「二人ともッ! そんなことよりもあれッ!」


研究施設の壁に開いた穴からは陸上艇――。


そこにいたウェディングの姿を見たネアが声をあげると、アバロンとコーダの表情が変わる。


舞う宝石ダンシング ダイヤモンド……。やはり来ていたか」


――アバロン。


「やるぞお前らッ! 俺たち三人で、確実に奴をぶっ殺すッ!」


――コーダ。


そして、ネアが叫ぶ。


「うん! 絶対に逃がさないッ! 私たち三人で絶対にあいつを始末するんだッ!」

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