#801

ウェディングの姿を見て意気込む三人は、帝国兵へ指示を出すことも忘れ、陸上艇の上に乗る彼女へと向かっていく。


飛行装置――ジェットパックを起動させ、迷うことなく放たれた矢のように真っすぐに飛ぶ。


すでに戦意を失っていたウェディングは、向かってくる三人の将校におびえ、何も反応ができずにいた。


陸上艇は動き出しているものの、アバロンたちのほうが速い。


「死ねッ! 舞う宝石ダンシング·ダイヤモンドッ!」


アバロン、ネアよりも先にウェディングの眼前に辿り着いたコーダが、握っていた銃剣タイプのインストガンの刃を突き刺そうとした。


だが彼がウェディングを刺す直前で、何者かによって吹き飛ばされてしまう。


「ダイヤの嬢ちゃんはやらせねぇよッ!」


それは先ほどローズからウェディングを助けたロウルだった。


いきなり飛び込んできたハザードクラス――非属ノン ジーナスの姿に一瞬ひるむアバロンとネアだったが、すぐに冷静さを取り戻し、彼へインストガンを向けて発射。


そして、撃ちながら左右から囲み、コーダと同じく銃剣の付いたインストガンで襲い掛かった。


しかし、電磁波をものともしないロウルのダブルラリアットによって、二人は吹き飛ばされ、研究施設の壁に叩きつけられる。


「くッ!? 化け物めッ!」


「何をしてるんですかッ! 全員舞う宝石ダンシング ダイヤモンド非属ノン ジーナスを捕えてくださいッ!」


ペッと血を吐きながら悪態をつくアバロンの反対側では、彼と同じようにロウルにやられたネアが帝国兵らに指示を出していた。


帝国兵は陣形を組んで、ロウルを囲むと持っていたインストガンがを一斉に発射。


正面から側面、さらに背面へ全身に電磁波が放たれ、これにはさすがのロウルも苦しそうに耐えるのみだった。


ウェディングと救出した仲間たちを乗せた陸上艇はすでに動き出していたが、残った帝国兵がその前に立ちはだかっていた。


「だから……させねぇって言ってんだろうがぁぁぁッ!」


ロウルは亀のように固めていた防御を解いた。


全身へと電磁波が浴びせられるが、それでも彼は叫びながら陸上艇を力任せに押す。


すると、陸上艇は穴から吹き飛ばされていく。


そして、そのまま何事もなかったかのように着地して発進。


この場からの脱出に成功した。


「まんまとやられてしまったな」


全身を電磁波で焼かれながらも笑みを浮かべていたロウル。


その前に、先ほど吹き飛ばしたローズが現れた。


「アバロン·ゼマティス、コーダ·スペクター、ネア·カノウプス。いつまで寝ているつもりだッ! さっさと兵を連れてウェディングの奴を追えッ! ここは私一人で十分だ」


ローズは親衛隊三人に指示を出すと、再びロウルが飛び出そうとした。


だが、彼女によってその道をはばまれる。


「おっと、お前の相手は私だよ、ロウル·リンギング」


「ローズ……」


半身不随はんしんふずいだったがお前が動けているとは……。もしかして神具の呪いが解かれたのか?」


答える余裕もないのか。


表情を歪めたロウルは、ただその身を固めるだけだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る