#799

うめいていたライティングと、黒焦げの状態から回復し始めていたウェディングは、その光景を見ていた。


ライティングは言うことを聞かない身体をふるい立たせ、ローズへと向かっていく。


「よくも二人をッ!」


「大声や気迫で人は殺せんよ」


残された機械の義手からブラスターを発射し、飛び込んでいくライティングだったが、ローズにその勢いを利用されてカウンターを喰らわされる。


彼女の装甲アーマードした拳がライティングの胸を貫通かんつう


トランスクライブとメモライズに続き、ライティングまで目の前で倒されたのを見て――。


ウェディングは、その場で放心状態になってしまっていた。


先ほど喰らった電撃の火傷やけどは、すでにえ始めている。


だが、身体が回復しても圧倒的な強さを見せたローズの前に、ウェディングは戦意を失ってしまっていた。


その場で両膝をつき、口を開けたまま震えているウェディングを見たローズは、ゆっくりと彼女へ近づいていく。


「あぁ……み、みんな……みんな……」


「不死身というのも難儀なんぎものだな。だが、その細胞もちり一つ残さねば楽になれるだろう」


ローズがウェディングのことを、哀れだと言わんばかりに見つめていた。


そして今度こそ完全に仕留めようと、装甲アーマードした腕に電撃を放ち始める。


「さらばだ、舞う宝石ダンシング ダイヤモンド。その深い愛を持ったあざやかな輝きを、私は永遠に忘れることはないだろう」


「あぁ……あぁ……」


ウェディングを見下ろし、その腕にまとった電撃を放とうしたローズだったが。


次の瞬間、突然彼女に三人の男女が飛び掛かった。


「行け……行くんだ……ウェディング……」


「なんでも……お前の……思い通りにさせるかよ……」


「ウェディング……逃げて……。みんなを連れて……逃げて……」


それはライティング、トランスクライブ、メモライズの三人だった。


三人の身体からは、先ほどローズによって開けられた穴から血が噴き出していた。


だが、これ以上ウェディングに近づけまいと、必死になってローズの身体にしがみついている。


「まだ動けたのか。私も爪が甘いな」


ローズは纏っていた電撃を全身に放ち、しがみついてくる三人の黒焦げにした。


だが、それでも三人はその掴んだ手を離すことはなかった。


「まだ息があるのか? しぶといを通り越して見苦しい」


さらに電撃を放つローズ。


そして、ついに事切れたトランスクライブとメモライズは、その場にドサッと倒れた。


「離さないぞ……」


だが、まだライティングは生きていた。


これにはさすがのローズも驚いていたが、彼女が電撃を放つのやめることはなかった。


バチバチと火花が散り、その度に全身を焦がされるライティングは、もう虫の鳴く声よりも細い呟きで、ウェディングに言う。


「頼む……ウェディング……。ボクの仲間を……ボクの愛するリーディンを助け……」


そう言いかけたとき――。


ライティングは全身から煙を出しながら、その場で息絶えた。

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