#792

そのときだった。


艦橋かんきょうにいた三人の前に、窓から閃光が輝き、轟音が鳴り響いたのだ。


アバロンはすぐに警備の帝国兵へ声をかけ、事態を確認しようとする。


「ハッチが破壊されたッ!? くッオルタナティブ·オーダーの連中かッ!?」


アバロンは、警備兵に艦内にいるすべての者へ状況を伝えるように命じ、自ら侵入してきたぞくを撃退すると言って飛び出して行く。


途中で飛行装置――ジェットパックを背負っていると、彼の後には当然とばかりにコーダとネアの姿があった。


「一人で行くんじゃねぇよ」


「さっき言ったばかりでしょ? 私たち“三人”でってさ」


「お前ら……。フン、遅れを取るなよ」


そしてジェットパックを起動させ、、三人は艦橋にあった出入り口から飛び出して行った。


――陸上戦艦ボブレンのハッチを破壊したトランスクライブとメモライズは、崩れ落ちた昇降口から艦内へと侵入していた。


武器をインストバズーカから小回りの利くもの――銃剣タイプのインストガンへと切り替え、戦闘用ドローンの部隊を引き連れ、襲い掛かって来る帝国兵たちに反撃する。


「ねえトランスクライブ。ライティングたちは無事に中に入れたかな?」


「当然だろ。オレたちはできる限りここで敵を引きつけるんだ」


トランスクライブは電磁波を撃ってくる帝国兵らに撃ち返しながら、言葉を続ける。


「オレたちはえさだ。あいつの作戦通りに、見事に帝国の連中を釣り上げてやろうぜッ!」


そして、派手に艦内を動き回りながら、ライティングとウェディングが侵入しようとしていた場所から注意を遠ざけようと行動を開始した。


――艦内の騒ぎを知ったライティングとウェディングは、陸上戦艦の側面に張り付いていた。


手足が義手義足であるライティングは、それがトランスクライブとメモライズの合図だと気が付き、金属の手足からジェット噴射。


ウェディングを背負ったまま、静かに艦内へと入って行く。


「よし、警備の者はすべて彼らのほうへ向かっているようだな」


艦内で身を隠し、周囲の状況を確認したライティングは、調べていたドクタージェーシーの研究施設を目指す。


低空飛行で音も立てずに飛んでいくライティングの背に乗るウェディングは、すでに拳の甲からダイヤモンド剣を出していた。


いつでも敵を斬り裂けるようだ。


途中で出遅れた帝国兵を見つけると、ウェディングはライティングの背から飛び降りた。


「おまえ――ッ!?」


大声をあげる間も与えずに、ウェディングがダイヤの剣を振って帝国兵の首を斬り飛ばす。


そして、再びライティングの背に飛び乗る。


「急ぎましょう」


「あぁ……」


ライティングは冷たくそう言ったウェディングを見て、悲しそうな顔をしていた。

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