#785

小鉄リトル スティールに問われたブレイクは、何も答えることができなかった。


ただ彼の心は、神具の試練でズタズタに引き裂かれ、もはや何か思考するには傷つき過ぎていた。


小鉄リトル スティールが言う。


《答えられないか……。このまま終わることも、再び剣を振るうこともできないのか……》


《しょうがないでしょう……。この子は、どちらを選ぶにしても、これまで一生懸命過ぎました。罪悪感に押し潰されないように、己の弱さに負けないように……》


小雪リトル スノーは、小鉄リトル スティールへそう言うと、ブレイクの傍へと近づいた。


そして、その雪のように真っ白な毛を彼の足にこすりつける。


そんな小雪リトル スノーに、小鉄リトル スティールも続いた。


二匹は、まるで泣く子供をなぐめるように、自分の身体を擦りつけていた。


ブレイクはその場に両膝をついて、そんな二匹にすがりつく。


枯れたのどからしぼり出すように喚き、止まっていた涙が流れ始める。


小雪リトル スノー小鉄リトル スティールは、泣きじゃくるブレイクの涙を舌で舐め取ると、その泣き顔へ自分の顔を寄せる。


だが、次第に二匹の姿がぼんやりとしたものへと変わっていく。


「なッなんだよッ!? どうしちまったんだよッ!?」


泣きながら訊ねるとブレイクに二匹が言う。


《もう、時間のようです》


《私たちもそろそろ消えるな》


ブレイクは離れていく二匹に向かって、行かないでくれと手を伸ばした。


だが、いくら捕まえようとしても、その身体をすり抜けてしまう。


「待って……待ってくれスノー……スティール……。オレは……オレはどうしたらいい……?」


二匹は答える。


《それはあなたが決めることですよ、ブレイク》


《あぁ、それは私たちでも誰でもない、お前が自分で決めることだ》


宙へと浮いて離れていく二匹を見上げ、ブレイクは訊ね続ける。


「わかんねぇんだよ……。オレがまだあいつらの役に立てるのか……。まだ生きていていいのか……。だから、だから……オレが頼れるのはお前たちだけなんだ……。なぁ……」


《ブレイクはどうしたいのですか?》


小雪リトル スノーの言う通りだ。今度こそお前のやりたいことを聞かせてくれ》


二匹に問われたブレイクは、再び黙ってしまう。


歯ぎしりをして拳に力を込めながら、ただ二匹のことを見上げている。


そんな彼に二匹は言う。


《いや、答える前に聞きなさい。あなたは確かに罪人かもしれない。犯した罪を消すことはできないのかもしれない、ですが――》


《お前がここ数年で過ごした時間は、まぎれもなく人と人との繋がりであった。そして、それはお前に救われた者が確かにいたことの証明でもある》


《もう一度訊きます。さあブレイク、あなたはどうしたのですか?》


再び訊ねられたブレイクの顔は、もう悲しみに打ちひしがれているものではなくなっていた。


まだ涙は流れていたが、そのときの彼の口元は三日月のような形になっていた。


「オレ……オレがやりてぇことは――」

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