#775

神具の試練を受けるためには資格がいる。


その資格とは、神具から加護や啓示を与えられた者――。


奇跡人スーパーナチュラル呪いの儘リメイン カースに選ばれた者たちだ。


試練を受けるためには先ほど述べた資格を持っていなければならない。


資格のない者が試練への扉内に入ると不適格とみなされ、問答無用で消されてしまう。


試練の内容は資格者の過去、あるいは迷いを乗り越えるような内容のものとなっている。


そのため、内容自体は受けた者次第となるので、一体何を見せられているのかは試練を受けた本人にしかわからない。


――ブライダルが試練を乗り越え、ギブバースからこの話を聞く少し前。


当然、ブレイクとソウルミューも己の内面と向き合わされていた。


彼らはそれぞれある者と顔を合わせている。


ブレイクは妹のクリーン。


そして、ソウルミューは彼が打ちのめされたときに、その再起のきっかけになった青年ダブだった。


ソウルミューは目の前に現れたダブを抱き締める。


その女性と見間違うほどの美貌と華奢きゃしゃな身体を力強く抱くと、彼は涙ながら口を開いた。


「ダブ、あぁぁぁッダブッ! よかった! またお前に会えたッ!」


「痛いよソウルミュー。そんな力いっぱい掴まないで」


左側のほおに入れられたトライバルな刺青を歪めて、ダブが嬉しそうに笑う。


だがソウルミューは、彼にそう言われてもその手の力をゆるめなかった。


涙だけでなく鼻水もよだれも垂れ流しながら、ただダブにすがり付くように彼を抱き締め続けている。


ダブは、そんなソウルミューを見てクスッと上品に笑うと、彼の頭を撫で始める。


「君は本当によくやったよ。あのときの戦いで、あのお父様を追い詰めたんだから」


「でも……あのときに……オレがバカなマネをしたから世界がこんなになっちまって……」


「それでも、僕は嬉しかった……。君が僕の死を聞かされて、取り乱してしまったのに……。それでも、凄く嬉しかったよ……」


ダブはソウルミューのことをなぐめながら言葉を続ける。


「そのときの君は、何もかもどうでもよくなって、僕のことを想ってくれたんだ……。そんな君を責められないよ」


「あぁ……あぁ……ダブ……ダブ……。オレを……こんなオレを許してくれるのか? 悪くないって言ってくれるのか?」


「うん、君は悪くない。だから、もう休もう」


ソウルミューは、ダブの暖かい抱擁ほうように自我が溶けていくの感じていた。


そうだ。


もういいんだ。


自分にできることなんてもう何もないのだと、ダブの身体から放たれる光に飲み込まれていく。


このまま眠りにつく。


ソウルミューがそう両目を閉じた瞬間――。


「でぇ~、問題はクソ兄貴だ! ここで折れたら完全に終いだぞッ! 少しはミウムや私、それとダブが認めた、あの物凄く小さくて情けないカッコいいとこを、もう一度見せてみなッ!」


ブライダルが怒鳴り声が彼の頭の中に響き渡った。

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