#774
ブライダルはその幼女に向かってハンドガンを構えると、問答無用で引き金を引いた。
だが、発射された弾丸は幼女の身体を通り抜けてしまう。
「ありゃりゃ? こりゃどうなってんのかね~。もしかして物理攻撃無効のスキルでも持ってるわけ?」
「やれやれ、いきなり酷いのぉ」
「その幼い容姿にその喋り方、あんたまさかロリババアってヤツですか?」
「鉛玉を浴びせようとしたばかりかババア呼ばわりとは……。お主はつくづく無礼な娘じゃ」
幼女はムッとすると、その長い髪を払いながらブライダルへと近づいてきた。
それから幼女は、自分の正体について話し始める。
「わしはキブバース。もう数千年もの間、ずっと世界を見守ってきた者じゃ」
幼女の名はギブバース。
まだ人類が文化を育む前から、この
そして、神具を創り出したのは自分であることをブライダルに言う。
「じゃあ、さっき私が見たヤツもロリバアさんがやったの? だとしたらずいぶんと悪趣味だね~」
「それは違うのぉ。もはや神具はわしの手には負えなくなってしまったのじゃ」
「なんで? だって神具ってロリバアさんが作ったんでしょ? それなのに手に負えないって、やっぱ誰かさんが暴走させたから?」
「それも違う。神具がそれぞれ自我を持つようになってから、わしの力などをとうに超えてしまったのじゃよ」
ギブバースがいうに、神具はすでに彼女の手に余ってしまっているので、何もすることができない状態にある。
そしてどうやら、エンポリが強引にここの扉を術でこじ開けたため、今こうして話ができているだけらしい。
「イード·レイヴェンスクロフトだったかのぉ。あやつの
「でも、私の雇い主がなんとか止めているみたいだよ。それと、なんだかよくわかんない試練をクリアすれば、暴走を止められるんでしょ?」
「その雇い主がどうやっているのかは知らんが、あやつは神具に語りかけることができるようじゃな。だが、問題は試練じゃ。お主は乗り越えることができたようじゃが、まともな人間に試練を乗り越えることは不可能に近い」
そう言ったギブバースを見て、ブライダルは鼻で笑う。
なら大丈夫だと、ハンドガンをホルスターに入れた。
「まあ私的にぃ、あんたが何者なのかとか世界が崩壊しようがどうでもいいんだけどさ~。とりあえずこの急展開で置いてきぼりなっちゃった人たちをスカッとさせるために言っとくよ」
「言っている意味が半分しかわからんが、なんじゃ?」
ギブバースに訊ねられたブライダルは口角を思い切り上げて答える。
「人間ナメんな。他人を、世界をナメていいのは私だけなんだよ」
そして、どこまでも続く薄暗い空間に叫ぶ。
「ブレイク君の心配はしてないよッ! なにせあんたは私に勝つような男だからねッ!」
そして、深呼吸してから再び声を張り上げる。
「でぇ~、問題はクソ兄貴だ! ここで折れたら完全に終いだぞッ! 少しはミウムや私、それとダブが認めた、あの物凄く小さくて情けないカッコいいとこを、もう一度見せてみなッ!」
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