#743

――志願兵たちに歓迎されながら、ジャズとニコはアミノに連れられ、並んでいる丸太小屋の一つへと通された。


一方、シンとイードはメディスンに連れていかれる。


「あとで連絡する。少し休んでから話をしよう」


メディスンは去り際にジャズへそう言った。


小屋の中には、まだ幼い少女――ソウルミューの妹であるリズムがいて、ジャズのことを迎える。


「ジャズお姉ちゃん!」


「リズム! 元気そうで良かった!」


「お姉ちゃんこそ。でも、なんで泣いてるの?」


「こ、これは……気にしないでッ!」


抱きついてきたリズムを抱き返すジャズ。


泣いていることを指摘されて慌てるが、すぐに笑顔を見せる。


そして、ジャズはれた目を拭いながら彼女に言う。


「あなたのお兄さん、ソウルミューが見つかったよ」


「ホントッ!」


兄が見つかったと聞き、リズムは嬉しそうだった顔をさらにパッと明るくした。


だが、ジャズはそんな喜んでいる少女を見て、ソウルミューの現在の状態を伝えるか迷ってしまう。


「お兄ちゃんはどこにいるのッ!?」


当然そう訊かれる。


ジャズは少し悩んだが、リズムにはちゃんと話すべきだと思い、彼女の兄がどうなっているのかを伝えた。


今ソウルミューは、仲間のブレイクとブライダルと共に、この大災害とエレメント·ガーディアンをしずめるためにある場所へ行っていること――。


そして、イードの息子の一人であり、彼にとって大事な人だったダブ·レイヴェンスクロフトを失ったことで、無気力になって酒浸さけびたりの状態であることを話す。


「それにダブって人だけじゃなくて、前にお父さんが死んだことも重なっているみたい……」


「そう……お兄ちゃんが……お父さんのことを……」


「お父さんのこと、あたしは知らなかったけど……。リズムたちは永遠なる破滅エターナル ルーインとの戦いで、お父さんを亡くしてたんだね……」


ジャズはこのことを知ったときに、叔父であるブロード·フェンダーの死で、自暴自棄じぼうじきになっていた自分がどれだけ情けなかったのかを思い出していた。


リズムはまだこんなに幼いのに、泣き言一つ言わずにいたのにと――。


「大丈夫……大丈夫だよ、ジャズお姉ちゃん!」


リズムはうつむいていたジャズにニッコリと微笑んだ。


そして、彼女の両手をギュッと握ると力強く言う。


「生きていればなんとかなる! お兄ちゃんはそんな弱くないもんッ! 絶対に、絶対にまた元気になるよッ!」


「リズム……あなた……」


「それに、お兄ちゃんがお酒でダメになっちゃうのは昔からだからね。でも、今度はちゃんとお医者さんに連れて行ってやめさせなきゃ」


「うん……そうだね……。リズムの言う通りだよ……」


そして、ジャズはそんなリズムに笑みを返した。


ニコはそんな二人を見て感極まったのか、大きく鳴いて二人に飛びついた。


「わぁッ!? どうしたのニコッ!?」


「ニコも嬉しいんだよ。リズムの笑顔が見れて」


リズムは驚き、ジャズは笑う。


そんな二人に抱かれながら、ニコは嬉しそうに鳴き続けるのだった。

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