#742

森の中にスクリーミングバードが着陸すると、そこへジャズたちを待っている人物たちがいた。


神経質そうな顔をした男性メディスンと、優しそうな顔をした女性アミノだ。


「ジャズ、無事で何よりだ」


「二人とも、わざわざ来なくてもよかったのに」


ジャズが小型ジェットから降りてくると、まずメディスンが声をかけ、突然アミノが彼女を抱き締めた。


余程心配をしていたのだろう。


アミノは瞳は涙でうるんでいた。


それから、彼女は穏やかな声でささやくように言う。


「おかえりなさい、ジャズちゃん」


「あの、その……ただいまです、アミノさん……」


戸惑っているジャズだったが、その表情は喜んでいるようだった。


それからアミノは、ジャズに続いてジェットから降りてきたニコとシン、そしてイードにも丁寧に挨拶をした。


「お二人とも初めまして。私はバイオニクス共和国で教師をしていたアミノという者です」


「あぁ……えーと……俺はシンと言います……」


そんな彼女の態度に、シンは驚いて声がうわずってしまう。


だが、イードのほうはただ黙って頭を下げていた。


すると、メディスンがまるでアミノをかばうよう前へと出てくる。


永遠なる破滅エターナル ルーインの教祖……イード·レイヴェンスクロフトと、その息子、シン·レイヴェンスクロフトだな。事情はサーベイランスから聞いている。悪いが、ここでのお前たちの行動は、こちらで制限させてもらうぞ」


「ちょっとメディスンさんッ! シンはあたしたちの仲間なんだからそんなことしなくてもッ!」


ジャズがメディスンに声を張り上げると、シンはスッと手で彼女を制した。


そして、メディスンのほうを向くと、彼と目を合わせる。


「あぁ、当然の対応だ。あんたに従うよ」


「記憶がないというのに悪いが、しばらくは我慢してくれ。それと父親のほうは監禁させてもらう」


メディスンはシンにそう伝えると、イードのほうを見た。


イードは不気味なほど落ち着いた様子で、また黙ったままその頭を下げていた。


その後ジャズたちは、アンや志願兵たちが待っている丸太小屋へと向かうことに。


「メディスンさんにアミノさん……。もう知ってるとは思うんですけど……」


その移動中に、ジャズが二人に声をかけた。


彼女が言おうとしていることは、ジャガーとクリーンについてだ。


二人の死については、すでにアンから伝えられていると思ったが、ジャズはもしかしたらと考えて話そうとすると――。


「その表情を見ればわかる……」


「えぇ……ジャガーくんとクリーンさんのことですね……」


二人は何を言おうとしているかに気が付いていた。


メディスンは言う。


ジャガーは面倒臭がり屋で飄々ひょうひょうした奴だったが、誰よりも周りが見えていた。


アミノは言う。


クリーンはいつもボーと呆けていたが、いつも他人に気を遣っていた優しい子だったと。


「二人の意志は私たちに引き継がれる……。なんとしても世界の混乱を止めるんだ」


無表情で言うメディスンだったが、その体は震えていた。


ジャズは思う。


この人は長い間、弟と仕事をしてきたのだ。


悲しくないはずがない。


アミノにとっても弟は生徒だった。


そして、彼女は付き合いは短いとはいえ、クリーンと仲が良かった。


今さら蒸し返すような真似をしたことを、ジャズは後悔した。


そして、森の奥へ進むと丸太小屋が並んでいるのが見えてきた。


「おい、来たぞ!」


「おぉ! ジャズちゃんだ!」


そこには、これまでジャズが救ってきた住民たち――今はアンやメディスンらと共に、大災害やエレメント·ガーディアンの脅威に襲われている人々を守る救助活動をしている志願兵たちの姿があった。


彼らはジャズの姿を見ると、皆が声をあげて彼女を迎える。


「これは……? どうしてあたしなんかに……?」


戸惑っているジャズにメディスンが言う。


「これがお前がしてきたことの結果だよ。……ジャガーとブレイクの妹にも、この光景を見せてやりたかったな」


「メディスンさん……あたしは……あたしはッ!」


その言葉を聞いたジャズは、こらえていた涙が溢れ出てしまっていた。


そんな彼女のことを、アミノは抱き締め、ニコがなぐめるように鳴いていた。

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