#732

ジープで走ること数時間。


遠くに果実園や田園でんえんが見えてくると、サーベイランスが車を止めるように言った。


「お前たちはここで待機していろ。私が様子を見てくる」


「敵は三人だぜ。そんなをことする必要があるとは思えねぇが」


ブレイクがそう言うと、サーベイランスが説明を始めた。


前にブレイクたちが確認にした後に、永遠なる破滅エターナル ルーインの信者たちが集まった可能性もある。


他にも罠なども仕掛けられているかもしれない。


だから襲撃する前に偵察する必要があると、サーベイランスは言う。


「それに、お前たちにわざと様子を見せていた可能性もある。ともかく、相手は世界を滅ぼせる力を持っていた男だ。慎重にことを運ぶに越したことはない」


「そこまで考えてんなら、もう何も言わねぇよ」


それからジャズたちは、サーベイランスに言われたように果実園から離れた場所で待機。


サーベイランスはその身体に内蔵してある反重力装置アンチグラビティを使って、地面スレスレを飛んで行き、果実園へと向かっていった。


ジープ車内には緊張感がただようが、ブライダルがそんな空気に耐えきれず口を開く。


「はぁ~、こういうって面倒だよね。待つ身は辛いなんて、今時の少女漫画でも好まれないよ」


誰も彼女の言葉には答えず、ただ黙っていた。


だが、それでもブライダルは話しを続ける。


「サーベイランスもさぁ、ちょっとビビり過ぎだよね~。そのイードなんたらっていう教祖様がどんだけ強いのかは知らんけど。こっちはハザードクラスが二人に、何より私と主人公補正が付いたジャズ姉さんがいるんだよ。余程のうつ展開にでもならない限り負けっこないって」


「本当によく喋る奴だな。まあ、お喋りな女は嫌いじゃねぇけど」


ラヴヘイトが呆れた様子でそう言うと、ブライダルがニヒヒと笑う。


その顔は「お兄さんは女をわかってるね~」とで言いたそうだ。


そこへ、ブレイクも話しに入ってくる。


「オレはやかましい女はキライだ」


「誰もお前の趣味なんて聞いてねぇよ」


ブレイクとラヴヘイト二人が軽口を叩き合っている。


前にはとても見られなかった光景だと、ジャズは思わず笑ってしまっていた。


そんな二人の会話を聞きながら、彼女はサーベイランスがラムズヘッドに頼んでいた武器を身に付けていた。


ストリング帝国軍が使用する背負うタイプの飛行装置――ジェットパック。


さらに、同じく帝国の電磁波放出装置――インストガン。


これらを使用するのに約一年のブランクはあるが、ジャズにとってはどれも馴染んだ武装だ。


「みんな、襲撃時にはサーベイランスの作戦通りで行くよ」


「あぁ、わかってるよ。俺とブライダルでその従者を押さえて、ブレイクが息子。そしてお前がイードを捕まえるんだろ」


ジャズが確認するように皆に声をかけると、ラヴヘイトが返事をした。


サーベイランスの作戦は、まずオーラを使用できる可能性のある一人をブライダルとラヴヘイトで押さえ、シンをブレイクが無力化させる。


そして、ジャズが両腕のないイードを捕らえ、大災害やエレメント·ガーディアンを止める方法がないか尋問じんもんするというものだ。


ラヴヘイトだけはその作戦に反対したが。


儀式の影響が無くなれば彼の恋人であるメイカが元に戻る可能性があると聞き、その作戦を受け入れた。


「あッ、我らが軍師殿が戻ってきたよ~」


ブライダルが窓の外を指さすと、こちらへ飛んできていたサーベイランスの姿が見える。


「あの様子だと、何もなさそうだったみたいね」


ジャズがそう言い、全員がサーベイランスの姿を確認した。


それから、誰も何も言わずにジープから降りた。

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