#733
――果実園と
その傍にはベッドがあり、イードはそこでその大きな身体を横にしている。
「イード様ッ! 野菜タップリ栄養満点の料理がもうすぐできますからね!」
弾んだ声でキッチンから話しかけるエンポリ。
イードは彼に小さく返事をすると、身体を起こした。
そして、狭い小屋の中を見回す。
「エンポリよ。シンがどこへ行ったかわかるか?」
「なに言ってるんですか? シン様なら朝からお祈りに出かけて、戻るのは夜なるかもって言っていたでしょ」
「そうだったか……。私も
イードが呟くように言うと、エンポリはキッチンから完成した料理を運ぶ。
「なに言ってんですか。イード様はそこまで年寄りじゃないでしょ」
「そうだな……。お前の言う通りだ」
エンポリのそう言われたイードは、彼に微笑みを返した。
そんな教祖の顔を見て、エンポリはさらにニッコリと笑う。
「ささ、温かいうちに食べましょう!」
そして、運んできた料理をテーブルへと並べていく。
小麦粉で作った麺と野菜を炒めた質素なものだが。
使っている調味料が絡み合って食欲をそそる香ばしい匂いが小屋を埋め尽くしていた。
エンポリはその料理の皿を手に取り、両腕のないイードに食べさせようとした瞬間――。
突然目の前にいたイードが吹き飛ばされた。
エンポリの目に入ったのは髪を結った女で、手には突撃銃、背中には飛行装置をつけているのが見えた。
「イード様ッ!」
エンポリはすぐに皿を捨て、両手の
「じっとしてろ」
「そうだよ~。じゃないと、その首が胴体からサヨナラしちゃうからね~」
ドスの効いた男の声と、間の抜けた少女の声が聞こえ、そのまま床に押さえ込まれてしまう。
それから両腕の間接を決められ、首には冷たい金属――大きく分厚い刃を持つ青龍刀が押し当てられた。
「いきなりなんなんだよお前らッ!?」
エンポリが叫ぶと、小屋に誰かが入ってきた。
入ってきたのは、白髪の少年ブレイク·ベルサウンドと、子供よりも小さな機械人形サーベイランス·ゴートだった。
「ブライダル。おかしな真似をしたら首を切り落とせ。そいつは別に生かしておく必要はないからな」
「はいよ~。なんなら今
サーベイランスがそう言うと、青龍刀を持った少女ブライダルかニヤニヤと返事をした。
エンポリは暴れて抜け出そうとするが、彼を捕らえている男――ラヴヘイトがさらに力を込め、その動きを封じる。
だが、エンポリはそれでも喚き続けていた。
一方、髪を結っている女――ジャズ·スクワイアに銃を突きつけられているイードは、動揺することなく彼女を見つめている。
「イード·レイヴェンスクロフト……。あなたに訊きたいことがある」
そして、ジャズは銃を突きつけたままで、見つめてくるイードへそう言った。
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