#688

サーベイランスの一言で、ラムズヘッドだけでなく、その場にいた誰もが驚愕きょうがくしていた。


そんな周りのことなど気にせずに、機械人形は話を続ける。


「では、何故ライティングでは難しいのか、その理由からべよう」


サーベイランスの説明では――。


ライティングはストリング帝国に、武力によって対抗した。


それしか手がなかったと言われてしまえばそれまでだが、それでは武装蜂起ぶそうほうきした各国と変わらない。


この混乱した世界で群雄割拠ぐんゆうかっきょした勢力の一つと同じだ。


それでは本当の意味で世界をまとめることなどできない。


サーベイランスはうつむくライティング――。


怒りで表情を歪めているトランスクライブやメモライズのことなど気にせずに、そう言った。


「テメェはッ! ライティングが好きで戦ってるって言いてぇのかよッ!」


「そうだよ! うちらは戦えない人たちを救うために立ち上がったんだよッ! ライティングだって戦争のためにその名前を出すのを嫌だったのに……。それなのにそんな言い方……。まるでライティングが帝国と同じみたいみたいじゃない!」


そして、ついに黙っていられなくなった二人は声を荒げると、ライティングが二人を制した。


だが、サーベイランスはトランスクライブとメモライズのことなど気にしない。


その視線はラムズヘッドのみに向けられている。


サーベイランスはさらに彼に言う。


「あとな、お前はあたかも世界の混乱を収めるためと言っているが。私からすればお前の所属しているエレクトロハーモニー社が手を貸さなければ、帝国もここまで苛烈かれつな行動をしなかったんじゃないか?」


そのサーベイランスの質問を聞いたジャズとニコは、これ以上事を荒立てないでくれと、オロオロと狼狽うろたえている。


この場で笑っているのはブライダルだけだ。


彼女は口こそ挟んでいないが、「いいぞもっとやれ」と言わんばかりにニヤニヤと笑みを浮かべていた。


「お前の意思なのか会社の方針なのかは、私にはわからん。だが、確実に戦火を広げているのはお前たちが武器や物資を与えているからだ」


「じゃあ、ロボット君。ジャズ中尉……いや、ジャズ·スクワイアなら世界を纏められるという根拠はなんだい?」


ここでようやく、黙っていたラムズヘッドが口を開いた。


訊ねられたサーベイランスは即答そくとうする。


「この小娘はこれまで武力に頼らずに、自分の主張を通してきたからだ」


サーベイランスの返答に、ラムズヘッドが何故かクスリと笑っていた。


そんな彼の反応を見たサーベイランスは、その内心で不快感を覚えた。

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