#687

口角を上げたラムズヘッドは、その大きな目をギョロギョロと動かして喋り続ける。


「もし君の言う通りにストリング帝国とオルタナティブ·オーダーが手を取り合ったとしよう。だが、そんなことになったら各国はどうすると思う? 怖がって言うことを聞くと思うかい? いや、それはないね。むしろ他の国同士で手を組んで帝国とオルタナティブ·オーダーをつぶそうとするはずだよ」


ラムズヘッドの予想では――。


ジャズがやろうとしているストリング帝国とオルタナティブ·オーダーの和解が実現すれば、各国がその脅威に恐れて手を組み、さらに激しい戦火が燃え広がると言う。


現在の世界情勢は、永遠なる破滅エターナル ルーインの教祖イード·レイヴェンスクロフトの行った神具を暴走させた儀式の影響で、大災害に襲われている状況だ。


そして、世界を仕切っていたバイオニクス共和国は崩壊し、その混乱にじょうじて各国が武力を使って台頭している。


それを収めようとしているのがストリング帝国であり、その苛烈なやり方に異を唱えているのがオルタナティブ·オーダーである。


ラムズヘッドが言いたいことは、結局どこかの勢力が各国をまとめなければ、この群雄割拠ぐんゆうかっきょは収まらないということだった。


「そこで俺は、いやうちの社長――フォクシーレディは、その世界のまとめ役にライティングを選んだ。彼なら弱者の気持ちも強者の立場も理解しているからね。それに、何よりも彼には神の使者のような誠実さと、自分の命よりも他人を助けようとする優しさがある。それは現在行方不明のノピア·ラッシクも認めていたみたいだしね」


ラムズヘッドの意見に誰も反論はない。


いつもならおどけるブライダルですら黙ったままだ。


だが、ジャズはどこか納得がいっていない様子だった。


たしかにラムズヘッドの言う通りだ。


もしライティングがすべての国を纏めるリーダーになれば、世界が間違った方向へ進むことないだろう。


それは先ほどラムズヘッドがべたように、ノピアも同じようなことを言っていた。


しかし、ジャズにはどうもラムズヘッドが言っていることに違和感があった。


上手く説明できないのだが、それで世界の混乱が終わるとは思えない。


ジャズは、むしろライティングが――オルタナティブ·オーダーが帝国と戦うことがさらに各国を刺激しているのではないかと、考えてしまっていた。


「一つ……言わせてもらっていいか?」


そんなラムズヘッドの話に、誰もが口を開かない空気の中――。


サーベイランスがラムズヘッドに言う。


「お前のいうその世界のまとめ役に、私はここにいるジャガー·スクワイアをす」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る