#682

ジャズは効果装置エフェクトで得た機械の腕。


マローダーは光剣――ダブル·ブレード。


そしてブライダルは青龍刀をそれぞれ構え、三人は言葉を交わすことなく互いの背を守り合う。


そして、三人を囲んでいるエレメント·ガーディアンが攻撃を繰り出せば、一人がそれを受け、残る二人が仕掛けてきたマシンを仕留める。


この攻守方法で敵の包囲から道を作ると、ブライダルが叫ぶ。


「逃げ道もできたし、それじゃそれそろ逃げるとしますか。マローダー少尉だっけ? あんた、逃げる足はある?」


「後方に乗って来たプレイテックが置いてあるはずだが。まさかここで逃げるつもりか?」


マローダーの言葉にジャズも彼の意見に同意したのか、ブライダルに言う。


「そうだよブライダルッ!? ここでこいつらを全滅させないと、また別のところを襲うかもしれないんだよッ!? だったらあたしらで倒さないと」


ジャズとマローダーは逃げるのに反対したが、ブライダルは呆れた様子で答えた。


すでに満身創痍まんしんそういであるジャズとマローダーがこれ以上戦えば、そのうち確実に力尽きてしまう。


だったら余力のあるうちに逃げ出すのが賢明だと。


「それに、ライティングって人が後で来ると思うから、ここで私らがこいつらを倒さなくても心配いらないよ~。というわけで、さっさと逃げましょうッ!」


ブライダルの説明を聞いたジャズは納得した様子でうなづいた。


「そういうことなら……」


「お前らは勝手に逃げればいい。俺はここでこいつらを殲滅せんめつする」


「マローダー少尉ッ!? またそんな自分の命を安っぽく使うつもりッ!?」


ジャズが声を張り上げると、ブライダルが彼女に耳打ちをした。


すると、二人は目を合わせてニヤリと笑みを浮かべる。


「なるほど、そうすればいいのね」


「そうそう。ワガママな子には、大昔からそうやって対処して来たんだから」


ブライダルがそう言うと、二人は突然マローダーの身体を左右から掴んだ。


そして、担ぎ上げると開いた包囲へと走り出す。


「何をするんだお前たち。早く離せ」


「こうでもしないとお兄さんは戦い続けるでしょ?」


「ブライダルの言う通りだよ。いいからジッとしていて、マローダー少尉」


小柄なマローダーを二人で担ぎ上げたブライダルとジャズは、そのまま包囲を抜けると、後方にあったストリング帝国の装輪装甲車へ彼を放り投げた。


マローダーは無表情のままだったが、その顔は不愉快そうに見える。


「さあ、ここまで連れてきてあげたんだからお兄さんもちゃんと逃げてよね。ジャズ姉さん、私らはあっちだ」


ブライダルがマローダーへそう言うと、二人は再び走り出す。


そして、ブライダルが隠していたオルタナティブ·オーダーのオートバイへにまたがった。


「それじゃねえ、お兄さん。またどっかで会えることを期待せずに待ってるよ~」


それからブライダルがオートバイのハンドルを握ってアクセル踏み込み、エンジンがうなる。


後部座席からジャズが叫ぶ。


「マローダー少尉ッ! あたしの言ったこと……忘れないでッ!」


マローダーは去って行く二人の背中を眺めると、すぐにプレイテックに乗り込み、装甲車を発進させた。


相変わらず無表情だったが、車内で彼は呟く。


「ジャズ·スクワイア……。おかしな娘だ」

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