#681

ジャズが驚愕きょうがくしていたが、マローダーはブライダルのことなど気にせずに、目の前にいるエレメント·ガーディアンの集団へと向かっていく。


「ブライダルッ!? なんであんたがここにッ!?」


「はいはい、ご都合主義な展開なのは百も承知だよ、姉さん。作者はあとで私がぶん殴っとくから、それで勘弁してね」


「あんたの言っていることが全然わかんないんだけど!? それよりもどうしてッ!?」


「呆れるのも驚くのもいいけどさぁ。今はあの帝国のお兄さんに手を貸してあげたほうがいいんじゃない? どうせジャズ姉さんのことだから、敵と仲良くなろうとしたんでしょ?」


「うっさいッ! でも、あんたの言う通りだ! ブライダルも手を貸してッ!」


「今さらそのセリフが出ちゃうの? まったく、手か貸す気がなかったらわざわざこんな危ないとこに来やしないっての」


そしてジャズとブライダルは、敵へと向かっていったマローダーの後を追いかけた。


エレメント·ガーディアンが取り憑いたナノクローンのナノマフPIは、前へと飛び出してきたマローダーに凄まじい攻撃を仕掛ける。


マシンが仕掛けたのは、先ほど弾き返されてしまったビーム攻撃だ。


だが、それは今までとは違ったやり方だった。


エレメント·ガーディアンの集団は、残ったマシン全機で一斉にビームを放ったのだ。


だが、それでもマローダーがひるむことはない。


まばたきすらもせずに、光剣――ダブル·ブレードを構える。


「……化け物のくせに考えている」


そしてそう呟き、無数の閃光が四方から向かってきた瞬間――。


マローダーの背後に二つの人影が現れた。


「マローダー少尉ッ! 勝手に突っ込まないでッ!」


「へえ~この帝国のお兄さんはマローダーっていうんだ。じゃあ姓はフェンダーかギブソンかだね。もしギブソンなら初期のアジカンを思い出すよ~」


その二つ人影は、当然ジャズとブライダルだ。


ブライダルはマローダーの持つダブル·ブレードを見て、オッと目を輝かすと戦闘中だというにニヤニヤとその口を開いた。


「ちょっとお兄さん! そいつはピックアップ·ブレードのバージョン違い、ダブル·ブレードじゃないですかッ!? なんでそんなものを持ってるですかッ!? つーかなんで私がそんなことを知っているかって? いいよいいよ、教えてあげるよ~。そりゃまあ私はアン·テネシーグレッチの大ファンだからね~。だからストリング帝国のことはそりゃ調べまくってるんだよ~。で~話を戻して、ブレードってもう生産中止になってディスコン状態なんでしょ? ジャズ姉さんや他の将校さんたちも使ってなかったのに、なんでお兄さんが持っているわけ? あッ、そりゃノピア·ラシックやローズ·テネシーグレッチが持っているのは知ってるよ。でもノピア·ラッシクが使っているのは死んだレコーディ·ストリング皇帝の使っていた遺品だし、ローズ·テネシーグレッチは特別に造らせたって聞いたけど。お兄さんはそんな偉い人じゃなさそうだし。なんでブレード、しかもそんなレアなダブル·ブレードなんてものを持っているのさ?」


マローダーは、まるで壊れたラジオのように喋るブライダルを一瞥いちべつして言う。


「誰だお前は?」


「えッ? まさか私を知らないのかいお兄さん? 私ってばこないだの帝国軍の追撃戦のときのかげの功労者だよ。お兄さんもあのときの追撃戦にいたって聞いたんだけど、まさか私のことを知らんのですか? そりゃマズいって、なんといってもジャズ·スクワイアの関羽雲長、張飛翼徳、趙雲子龍といえば、この不死身の超絶美少女傭兵ブライダル。それを抜きにしてもそこそこ有名なはずなんだけどな~私。でさぁ~私が有名になったすっごい事件があって~」


「ジャズ·スクワイア……。このお喋り女を黙らせてくれ」


マローダーがジャズにそう言うと、ブライダルはさらに言葉を続けた。


そんな酷いことを言わないで。


私の話を聞いておくれと、まるで自分たちを囲んでいる敵――エレメント·ガーディアンがいないかのように喋り続ける。


「もうブライダルッ! 話なら後でいくらでも聞いてあげるから今は戦闘に集中してよ!」


「はいはい。かぁ~、しょせん私の話はすっ飛ばされるのね。でも、めげない。私はこんなことじゃめげないよ~」


「少しくらいへこみなさいよ、あんたは」


ジャズがポツリと言うと、ブライダルは二ヒヒと笑って背負っていた分厚い刃を持つ柳葉刀りゅうようとう、いや青龍刀を抜いた。

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