#680

エレメント·ガーディアンに取り憑かれたマシンらのビーム兵器がうなる。


まるで獣の雄たけびのような音をあげ、閃光がジャズとマローダーを襲う。


だが、放たれたビームをジャズは 効果装置エフェクトで機械化した腕で弾く。


そして、マローダーのほうはダブル·ブレードで打ち返し、ビームを発射したマシンを倒して見せた。


「すごい……。ビームを打ち返すなんてッ!」


「なんだ? お前はこれくらいもできないのか? ノピア将軍やローズ将軍は当然として、この技術は昔の帝国軍人なら一兵卒でもできた基本的なことだぞ」


ストリング帝国の剣術は、すべて亡きレコーディ·ーストリング皇帝が編み出したものだ。


その剣術で使用する――ピックアップ·ブレードの使用方法はけして難しいものではない。


ただスイッチを入れて振り回す、ただそれだけである。


しかし、前述のように誰にでも使うことはできるが、柄の部分にしか重さがないことや光刃が独特なジャイロ効果の物理量を生み出す性質に加え、発生した光刃全体全方向が等しく切断する刃部であることなど、何の訓練も受けていない人間が武器として使用するのは、自分を傷つけてしまうリスクがあまりにも高く危険である。


それ以外にも、この世界ではストリング人以外の人間がピックアップ·ブレード使うことは、非常に恥ずべき行いとされている(それは、かつて帝国が行った悪行のため)。


「あたしが訓練を始めたときには、もうブレードの授業なんてなかったよ。それに、ブレードはもうコストの問題で生産中止なってるはずでしょ?」


「フェンダーの分家のお前にブレードの技術を伝えていないとは……。まったく、呆れて言葉も出ん」


「呆れてる場合じゃないよッ! 敵が来るッ!」


ジャズの叫びと共に、エレメント·ガーディアンが襲い掛かってくる。


どうやら憑れたマシンの集団は、マローダーの打ち返す反撃方法を理解したようだ。


ビームの放出を止め、接近戦を仕掛けていた。


「こっちは近づいたほうが戦いやすいんだッ!」


ジャズは再びマシンの頭部に飛びつくと、その装甲を破壊。


マローダーもまた手を伸ばして来るマシンの手をブレードで斬り払い、そのまま胴体ごと真っ二つにして倒す。


一見して優勢に見えたが、やはり敵の数は多い。


何せエレメント·ガーディアンに取り憑かれたのは、ストリング帝国とオルタナティブ·オーダー両陣営の戦闘用マシンなのだ。


両部隊のナノクローンとNano Muff Personal Insight(ナノ マフ パーソナル インサイト)通称ナノマフPIを合わせれば、一国を滅ぼせるほどの大軍。


たとえ一機、二機と破壊しても、その勢いが止まることはない。


「なんとかなるかと思ったけど、やっぱり厳しいね……」


「また泣き言か。なら、お前はさっさと逃げるといい」


「あなたが助けに来てくれたのに、逃げれるはずないでしょ」


「甘い正論だ……。そいつも当然借り物の言葉だろう」


軽口を叩き合ってはいるが、ジャズもマローダーもすでに限界が近づいていた。


このままではジリジリと追い詰められてやられる。


そう二人が思っていた瞬間――。


「はいはい~、助けに来たよ~。不死身で超絶キュートな傭兵少女、ブライダルちゃんがね」


気の抜けた声を出しながら、ブライダルが現れた。

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