#609
黒い戦闘服の集団に挟まれた状態で森を進んでいくジャズたち。
ジャズはこれではまるで囚人のようだと思いながら、大きくため息をつく。
「ねえねえ姉さん。なんかサーベイランスの話だと、こいつらの正体はオルタナティブ·オーダーなんだってさ」
歩きながら耳打ちしてくるブライダル。
ジャズは彼女の言葉を聞いて呆れる。
「あんたさ……。なんだってさって言うけど、この人たちのことを知ってたんじゃないの?」
ジャズはオルタナティブ·オーダーのことは知っていた。
それは以前にブライダルから、ストリング帝国軍のノピア派だったライティングを中心に結成された組織であることを聞いていたからだ。
メンバーは元
ブライダルは全く知らなかったような言い草だ。
「えッ!? あぁ……そうだったそうだった! 私、知ってたんだったわッ! いや~どうやら度忘れしちゃってたみたいだね~」
「……フツー忘れる? ホントは実際に見るのは初めてだったんじゃないの?」
「アハハ、姉さん。そこは突っ込まないでよ。まあまあ、サーベイランスがわかってたんだからいいじゃんいいじゃん」
「あんたねぇ……」
ブライダルは表情を強張らすジャズに向かって舌をペロッと出した。
右手を頭にやりながら可愛らしい笑みを浮かべている。
そんなブライダルの顔に、ジャズは思わずヘッドバットを喰らわせてやろうかと思った。
だが、その前に先を歩いていた黒い戦闘服の集団――オルタナティブ·オーダーのメンバーの一人が声をかけてきた。
この先に彼らの隊長がいると。
ジャズはその言葉に表情を歪めた。
この先と言われても前に見えるのは周りと変わらない木々。
しいて言えば、草が生い茂っていて見えにくくなっているだけだ。
こんな何の防壁もないところにオルタナティブ·オーダーの隊長がいるのだろうか。
「不用心だな……」
「いや、そうでもない。意外とこういうほうがカモフラージュできるのだろう」
ジャズがぼやくとサーベイランスがそう言った。
たしかに言われてみればそうかもしれない。
別に拠点にしているわけじゃないなら、案外何もない自然のままのほうが敵に見つかりづらいのかも――。
と、ジャズは言われた通りに生い茂る草を抜けていく。
そこには、オルタナティブ·オーダーのメンバーと同じ黒い戦闘服を着た少女とヨレヨレのコートを着た髪の長い若い男がいた。
「……ジャズ、ジャズ姉さんッ!?」
「ウェディングッ!? ウェディングじゃないッ!」
その少女はジャズがバイオニクス共和国の学校に通っていたときの後輩――ウェディングだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます