#608
それからジャズたちは朝食を取った。
ブライダルとニコはサーベイランスの作ったスープに口し、美味しい美味しいと嬉しそうにしている。
その表情はわかりやすくホクホクのえびす顔で、昨夜の我慢大会をしているようなものとは明らかに違っていた。
「こりゃマジで旨いねぇ~。今度からはサーベイランスが料理担当でいいんじゃね?」
ブライダルがそう言うと、サーベイランスはタイミングと必要があればやると返事をした。
そんな会話の中で、ジャズはなんだが複雑そうな顔をした後に、乾いた笑みを浮かべている。
「ハハハ……まぁ、こんなもんだよね……」
いくら張り切ってもできる者には敵わない――。
ジャズはそう思っていた。
そんな少し寂しそうな彼女に気が付いたニコは、ポンッと優しくその肩を叩くのだった。
その後、食器を片付けて出発。
火を消し、この森周辺にいると思われるストリング帝国軍、またはオルタナティブ·オーダーの軍を探すことに。
今日は珍しく暖かい日だった。
吹く風も穏やかで散歩するには良い陽気だ。
「なんか良い風が後押ししてくれてる感じだね」
「ただの天気だろう。我々の運気に影響などない」
「もう、そんな冷たいこと言わないでよ」
「冷たいも何も私は機械だ」
ジャズの言葉にサーベイランスがそう返事をすると、彼女はニコのほうを見る。
ニコはサーベイランスとは違い、この陽気を喜んでいるようだ。
「ほら、あんたと同じ機械でもニコは嬉しそうだよ」
「そういうプログラムを入れられているんだろう」
「なら、あんたもこの素晴らしい陽気を感じられるようにプログラムを直しなさい」
サーベイランスはジャズの言葉に辟易していると、突然ニコが大声で鳴いた。
その鳴き声と共に、黒い戦闘服を着た集団が一斉に森の中から現れた。
全員が銃を持っており、その銃口はジャズたちに向けられている。
「ありゃりゃ、こりゃ困ったねぇ~。どうする姉さん?」
ブライダルが背中にある柳葉刀――分厚い刃の青龍刀に手を伸ばして訊ねた。
ジャズも身構えながら、身に付けていた普通の人間がマシーナリーウイルスの適合者と同じ力を得るための
彼女の腕が白い鎧甲冑のような装甲を纏う。
臨戦態勢へと入ったかと思われたが、ジャズは両手を上げて黒い戦闘服の集団に声をかけた
自分はストリング帝国の将校ジャズ·スクワイア。
あなたたちと戦う意思はないと。
「わかったら銃を下ろしてほしいんだけど?」
ブライダルは前に出ていくジャズの背中を眺めながら、サーベイランスに小声で訊ねる。
「やっぱ姉さんは甘いねぇ。問答無用で撃ってきたらどうすんだよ。でぇ~私たちの諸葛亮·孔明ことサーベイランス·ゴート軍師はどう思う?」
「連中はあいつの名を聞いて動揺している。ここはしばらく様子を見よう」
「マジで? それでいいんですか? 私ならこんぐらいの人数さっと秒殺できちゃうけど?」
「その力は後に取っておけ。今は大人しくしているんだ」
それから黒い戦闘服の集団はジャズたちについてくるように言った。
なんでも彼らの隊長に会わせ、ジャズが本人かどうか確認してもらうようだ。
「その話を聞くに、あなたたちの隊長さんはあたしの顔を知っているみたいね。一体誰なの?」
森を移動中にジャズが訊ねたが、黒い戦闘服の集団の一人が来ればわかると答え、それ以外は何も口にすることはなかった。
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