#594

それからジャズとブライダルの攻撃はさらに激しさを増していった。


ジャズの普通の人間がマシーナリーウイルスの適合者と同じ力を得るための腕輪バングル――効果装置エフェクトでの攻撃。


さらにブライダルの青龍刀での斬撃により、もう原型も留めないくらいボロボロになっている状態だ。


「楽勝じゃないの。ねえ、姉さん?」


「油断は禁物だよ。その証拠にまだあの黒い光は消えていない」


「大丈夫だって~。それよりも今日から私たちのコードネームをラブリーエンゼルにしようよ。まあ、そのうちダーティペアとか呼ばれちゃいそうだけど。ちなみに姉さんはケイとユリどっちがいい?」


「だから油断するなって言ってるでしょッ!?」


「電気羊だけどムギ役もいるし、ロボットのナンモ役も入ったから丁度いいよね~」


「あんたねぇ……」


「ロ·ロ·ロ·ロ·ロシロシアン~♪」


「こんなとき歌ってんじゃないわよッ!」


余裕で歌を口ずさみ始めるブライダルに、ジャズは何度も声を張り上げるが、彼女はそのまま歌い続ける。


「ロッシッアンッ♪ ロシアンルーレットッ♪ 今すぐ心に白黒つけてぇ~♪」


ブライダルは歌いながらだが、襲ってくるコイルを見事に躱して腰のホルスターにあった二丁のハンドガン――デザートイーグルで応戦。


そんなふざけた態度とは思えない動きを見せる彼女に、幼い頃から軍人として訓練を受けていたジャズもさすがに舌を巻いている。


「前にウェディングがギャグ補正が入ったキャラが最強とか言っていたけど……。ブライダルはそれに当てはまりそうね……」


「ノンノン。それ違うよ姉さん」


ブライダルは二丁のデザートイーグルの反動など物ともせず、正確に歯車のようなジェネレーターを狙い撃ち続けながら、ジャズに言葉を返す。


それからデザートイーグル撃ちながらさらに前進。


そして、弾丸が尽きると背中の青龍刀を抜いて半壊状態のジェネレーターを真っ二つに切り裂いた。


「私が単純に強いだけさ。そこにマジックなんてない。まあ、たしかにぃ~。メタ発言する奴はだいたい反則みたいに強いけどね~」


青龍刀を背に戻しながら言うブライダル。


黒い光を纏ったジェネレーターは完全に破壊されたと思われたが――。


「まだだッ! まだ奴は終わってないぞッ!」


ニコに連れられて下がっていたサーベイランスが叫んだ。


サーベイランスは声を張り上げると、自分を掴んでいたニコの背に回ってその豊かな毛を持つ身体を掴み返して宙へと浮いてさらに後退する。


ニコは慌ててメェーメェー鳴いたが、その短い手足では背に回ったサーベイランスに触れることができなかった。


ニコなりにサーベイランスを守るのは自分だとでも言いたかっただろう。


だが結局、反重力装置アンチグラビティで飛ぶサーベイランスにそのまま連れて行かれてしょんぼりと鳴いている。


「そんなことよりもさ。ラブリーエンゼルがダメならヴェルーカ·ソルトはどう? ルイーズとニーナもケイとユリに負けないくらいキュートだと思うんだけど。それとも姉さんってシューゲイザー系好きとか? だったらラッシュのミキとエマほうがいいよね」


「前ッ! 前を見なさいブライダルッ!」


ジャズは、サーベイランスの言葉など気にせずに軽口を叩き続けるブライダルに声を張り上げた。


ブライダルが前を向くと、破壊されたジェネレーターから黒い光が激しく溢れ出し、この室内を覆い尽くそうとしていた。

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