#595

黒い光は室内にあったパイプやシャフトを飲み込み、それを使ってブライダルを攻撃し始める。


ブライダルは再び青龍刀を握って応戦。


そして、壁や床から伸びて来る黒い光を避けようとジェネレーターから離れる。


「なんだよこれッ!? こんなのありですかッ!?」


叫ぶブライダルにジャズは何も言えずにいると、ニコを掴んで飛んでいたサーベイランスが口を開いた。


どうやらサーベイランスが調べたこの黒い光は、機械類に取り付いてそれを自在に動かすのだそうだ。


さらに黒い光に飲み込まれた人間や動物はその中で分解、再構築され、取り込まれた機械と融合して人間を襲うのだと言う。


「ストリング帝国はこの黒い光のことを、エレメント·ガーディアンと世界に発表していたな」


「こいつがなんなのかはわかったけど、どうすんのこれッ!?」


室内の天井近くを飛んでいるサーベイランスにブライダルが叫んだ。


彼女は訊ねながらもデザートイーグルのマガジンを入れ替え、迫ってくる黒い光を撃ち続けているが、大した効果はなさそうだ。


「サーベイランスッ! 何か対策はないのッ!?」


ジャズもブライダルに続き、効果装置エフェクトで機械化した掌を翳してディストーション·ドライブを放って牽制したが、黒い光が止まることはない。


速度こそ遅いものの、ジャズたちを室内の隅へと追いやっていく。


サーベイランスがジャズに答える。


「エレメント·ガーディアンは、本来なら機械に取り付くことでその戦闘力を上げる幽体のようなものだ。つまりその本体となった機械を破壊すればいいのだが――」


「本体のジェネレーターはとっくにぶっ壊したよッ!? それなのに止まんないじゃないのッ!」


ブライダルがサーベイランスの言葉を遮って叫ぶ。


ジャズも彼女と同じ気持ちだ。


このドーム型都市であるイノセント·パッケージ·シティ通称IPSへ来る前。


エンカウンターズで現れた四輪駆動車――ジープに取り付いた黒い光を、ブライダルが真っ二つにしたことで確かに倒したからだ。


だが、この目の前のジェネレーターに取り付いた黒い光――エレメント·ガーディアンは、本体と思われる歯車のような形状した部分を破壊されてもまだその動きを止めていない。


サーベイランスは喚くブライダルに落ち着くように言うと、先ほどの言おうとしていた話を始めた。


「こいつは今、常に機械を取り込んでいる状態だ。つまりは、食事しながらも耐えられないくらいの高出力のエネルギーをぶつけてやればいい」


「なるほどね~。わかりやすい説明をありがとう。でもさ~、そんな火力を持った攻撃なんて、今の私らにはできないんだけどね~」


「何かないのか? 爆弾とかレーザー兵器とか」


「あのね、私は基本的に戦闘はバランス派なの。簡単にいうとフィン·ファンネルのないニューガンダムみたいなものよ」


「ニューガンダム? なんだそれは? 何かの兵器なのか?」


ブライダルの出した名に聞き覚えがないサーベイランスが訊ねると、ジャズが彼らに声を張り上げる。


「あんたらねッ! こんなときになに悠長に話なんかしてんのッ! そんな余裕ないでしょうがッ!!」


ニコもジャズに同意しているようで、サーベイランス共に宙に浮きながら辟易とした顔で鳴いている。


ブライダルはそんな彼女を見て笑い、サーベイランスがぼやく。


「何故私が怒鳴られなければいけないんだ……」


「いいから対策をッ! こいつをなんとかしないとあたしらも喰われちゃうよッ!」


ジャズが叫ぶと、サーベイランスはニコを彼女のほうへと放り投げた。


突然宙から落とされたニコは慌てていたが、ジャズはしっかりと電気羊をキャッチ。


まだ震えているニコを抱いてサーベイランスのことを見上げる。


「いきなりなにすんのッ!?」


「二人共下がってろ。あとは私がやる」


そして、そう言ったサーベイランスは自分も床へと下り、迫ってくるエレメント·ガーディアンの前に立った。

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