#592
階段を下りていくと次第にパイプやシャフトなどが見え始め、エンジン音のようなものが聞こえてくる。
複雑に絡み合っている管と回転軸を目にしてジャズは確信する。
間違いない、この先にこのドーム型都市の動力部がある。
階段を下りる足取りを早める。
ブライダルとニコは急に歩く速度を上げたジャズの後を慌てて追いかけると――。
「待って……」
突然彼女は足を止めた。
階段からそっと身を乗り出しているジャズ。
その先には、ジャズの予想通りこの街の動力発生装置――ジェネレーターが見えた。
巨大な歯車を思わせる外観には、そこら中にコイルが巻き付けられている。
休むことなく動力を供給しているのだろう、先ほどから聞こえていたエンジン音の正体はこれだった。
「ビンゴだね~。でも、あれは……」
ブライダルもジェネレーターのほうを見て、何故ジャズが立ち止まったのかを理解した。
そこには、この湖に沈んだ街イノセント·パッケージ·シティ通称IPSまで来るために後をつけた相手――。
小さなロボット――サーベイランスがいたからだった。
サーベイランスは、当然柄の悪い男女の集団と一緒にいた。
しかし、何故か彼らも動かずに、そのジェネレーターの前で立ち止まっている。
「おい、サーベイランスッ! こんなところに金目にものなんてあるのかよッ!?」
「そうよッさっきから黙ったままでさ! 何とか言いなさいよッ!」
集団の中の男と女が叫んでいる。
それでもサーベイランスは返事をせずに黙ったままだった。
どうやらその会話を聞くに、サーベイランスはこのジェネレーターの前に来た理由を、彼らに説明していないようだ。
だが、急にサーベイランスが前に出始めた。
そしてジェネレーターの目の前に立つと、男女の集団に声をかける。
「この先に、この街すべてセキュリティーを解くことができるICカードがある。それがあれば、金庫だろうがなんだろうが解除できるぞ」
サーベイランスの言葉に、男女の集団は両目をパッと開いて嬉しそうにしていた。
だが、目の前あるジェネレーターがまるで獣が叫ぶように機械音を鳴らし始める。
さらに、ジェネレーターのコイルや歯車のようなボディからは、黒い光のようなものが溢れ出てきていた。
男女の集団は一斉に、この化け物はどうするんだと言うと、サーベイランスが答える。
「こいつは私が相手をする。お前たちは気にせずに先へ行くといい」
「大丈夫なのかよッ!?」
男が叫ぶとサーベイランスはそういう約束だったと返事をして、男女の集団をジェネレーターの奥にあった部屋へと行かせた。
するとジェネレーターが呻くような音を鳴らし、外観に付いたコイルをまるで生き物の触手ように動かし始めた。
サーベイランスはそれでも臆することなく、ジェネレーターの前に立っていた。
ジャズはそんなロボットの姿を見て、サーベイランスの目的がこのジェネレーターだったのかと思っていると――。
「ジャズ·スクワイア、そこにいるんだろう? 早速だが、こいつを倒すのを手伝ってくれ」
突然サーベイランスが手を貸すように声をかけてきた。
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