#583

一段一段階段を踏みながらジャズは考える。


もしサーベイランスが復活したのなら再び人類を管理しようとしているかもしれない。


今は大災害後。


仲間たちとは離ればなれの状態。


あのときは皆と協力してサーベイランスを止めることができたが、現在こちらは自分とブライダルのみ。


サーベイランスの強さを思い出すと、ジャズは二人だけで止められるとは思えないでいたが――。


(でも、サーベイランスに会えばサービスのことも何かわかるはず……)


サーベイランス·ゴートと同じくバイオニクス共和国で造られたアンドロイドの幼女サービス。


サービスはジャズにとっても大事な仲間の一人だ。


まだ十五歳の彼女だが、ある意味ではサービスのことを娘や妹のように思っている。


「ねえねえ、そのサーベイランスってのと姉さんってどんな関係なわけ?」


階段を上がるのが面倒なのか、ブライダルが不機嫌そうに訊ねる。


たしかに三階までは長く、食事中に急に移動させられているのもあるだろう。


だがそれ以上に、ブライダルは目の前を歩く男女集団が嫌いのようだ。


いつもの茶化した態度は同じだったが、その中にある苛立ちをジャズは感じ取っていたが、あえて無視を決め込む。


それから三階に到着――ジャズたちはサーベイランスがいるという部屋へと入った。


「遅かったな……ッ!?」


そこには、小さな機械人形が部屋にポツンと立っていた。


その姿は小さな男の子が好みそうなメカニカルなロボット――。


手足は短く、三本指の手足。


ジャズが電気仕掛けの仔羊ニコよりも小さいその姿に驚いていると、サーベイランスが口を開く。


「お前はジャズ……ジャズ·スクワイアかッ!?」


どうやらこの小さなロボットは本物のサーベイランス·ゴートのようだ。


ジャズの姿に戸惑いを隠せないといった様子だ。


そんなサーベイランスの姿を見たジャズは思う。


以前はプロテインを過剰摂取したボディビルダーのような身体だったサーベイランス。


だが、今の彼はただの玩具のような姿だ。


これでは以前のような恐ろしい力は発揮できない。


そう思っていたジャズを見て、その名を呼んだサーベイランスは無言で彼女のことを見つめている。


それはジャズも同じだった。


狭い部屋で、小さな機械人形とサイドテールの少女が黙ったまま視線を合わせている様子に、男女集団も何を言っていいかわからないようだ。


またヒソヒソと互いに耳打ちをし始めている。


そんな空気の中で、ブライダルが口を開く。


「へぇ~この子がサーベイランス? まさかロボットの知り合いとはねぇ~。いやはや、ジャズ姉さんはやっぱ面白いわ~。でぇ~姉さんもサーベイランスちゃんも互いに用があるんじゃなかったのかなぁ~?」


ふざけた態度はそのままに――。


ブライダルはジャズとサーベイランスへそう言った。


それがきっかけになったのだろう。


ジャズはサーベイランスの前に歩を進めると、彼に言う。


「サーベイランス……。あなたに訊きたいことがあるの。サービスが今どこにいるか知らない?」

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