#579
ジープをぶった切ったブライダルは、青龍刀を背へと収めた。
そして、クネクネと身体を揺らしながら艶っぽく笑ってジャズのほうを振り向く。
「ようやく面白そうな人に会えたよ」
頭のてっぺんから伸ばしたポニーテールと、童顔で小柄なトランジスタグラマーな体型をした傭兵。
年齢はジャズよりも年下の十四歳。
身に付けている服は、身体の線がすごく強調される特殊な素材を使ったパイロットスーツのようなものを着ている。
その正体は、ハザードクラスであるウェディングと同じく、バイオニクス共和国のとある研究所で行われた
実質的にどんな重傷を負おうが、どんなウイルスに感染しようがすべて正常な状態に治してしまう治癒能力――
つまりはほぼ不死身であり、その実力は世間で知られているよりも高く、本人も誰にも負けないと自信を持っている。
「死んじゃったかと思ってた……」
今にも泣きそうな顔で言うジャズに、ブライダルはニッコリと微笑む。
そして、クルリと回り始めるとその口を開く。
「私がそんな簡単に死ぬはずないでしょ? それにさぁ~、たとえこの世界が地獄になったって、私は絶対に楽しく生きてやるさ。人生楽しくなきゃ嘘だからね~」
「あんた……変わってないわね……」
笑みを交わし合うジャズとブライダル。
そんな二人にニコが駆け寄ってくる。
ブライダルは走って来たニコを抱き上げると、嬉しそうに言う。
「おぉ~こいつは電気仕掛けの仔羊じゃないかッ! まさにこいつを連れている人物が作品の主人公ッ! どうやらお姉さんに会えたことで、あたしもアン·テネシーグレッチばりに主人公補正が付きそうだよ~」
「ワケわからんことを言うのも変わってないみたいね……」
ブライダルの言葉に顔を引き攣らせるジャズ。
ニコも彼女が何を言っているのかわからずに、抱き上げられたまま小首を傾げている。
「ブライダル。実はあたし、ずっと地下にいて世界が今どうなっているかわからないの」
ジャズは、この一年間自分がどこにいて誰といたかを話すと、世界の現状を訊ねた。
ブライダルはニコを地面に下ろすと、この町で彼女が根城にしている宿で話そうと言って歩き出す。
そして、ジャズとニコはブライダルの後を追い、その宿へと向かった。
「ねえ、あんたはずっとこの町にいたの? それとあたし以外の誰かとはどこかで会った?」
「だから、話は宿に行ってからにしようよ。食事をしながらのほうが会話も弾むってもんでしょ?」
「別に歩きながらでも問題ないでしょ?」
「かぁ~姉さんは相変わらずせかせかしてるなぁ~。気持ちはわかるけど。まあ、なんにしても最初に会えたのが私で良かったね」
「……? それってどういう意味?」
「だって私みたいなお喋りキャラじゃないと説明的な話が聞けないじゃない? それに、ほらあたしってパーティー内でも最強クラスだったしぃ。序盤で仲間になるにはなにかと都合がいいんだよねぇ~」
「なにをゲームみたいなことを……」
その道中でのブライダルの言動に――。
ジャズが呆れているとニコも大きくため息をつき、メェ~と乾いた鳴き声を出すのだった。
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