#566

突然現れたプロコラットとシン。


「ズルフィカールッ! 俺と戦ってくれッ!」


シンが叫ぶと先ほどイードが放り投げた聖剣ズルフィカールが彼の手へと飛んできた。


それからシンはプロコラットと同時に飛び掛かる。


「愚か者め。今の私は、お前たち二人分の力も上乗せされているのだぞ」


だが、イードが輝く掌を翳すとそこから放たれた光の輪によって二人はソウルミューと同じように地面に押さえつけられてしまった。


そのときのプロコラットとシンは明らかに動きが鈍かった。


おそらく先の言葉から考えるに、イードが行おうとしていた儀式の準備で何かされたのだろう。


顔色も悪くまるで全身の血を抜き取られたかのように青白い。


「今のお前たちでは私を止められない」


イードが動けない二人を見下ろす。


倒れた状態でイードを睨みつけるプロコラットとシン。


二人は何か喋ろうと口を開こうとしたが、光で顔を覆われて黙らされてしまう。


「お前たちの役目はもう終わった。神具と奇跡人スーパーナチュラルの血はすでにこの私の身体に入っている。手を下すつもりはなかったが、それほど死にたいのなら望み通りにしてやろう」


イードは二人へそう声をかけると、両手を大きく広げてそれを回しながら円を描いた。


そして、それから右手を夜空へと向けると、無数の光が上空へと現れる。


先ほどはまるで太陽のように夜空を照らしていた巨大な光球を出してみせたが。


今度は星空のような風景を作り上げる。


ジャズはそれを見て理解した。


イードがそれを――星のように浮かぶ無数のオーラの刃を、自分たちに降らせるつもりなのだと。


「やめてぇぇぇッ!」


ジャズはすでに枯れている声で叫んだ。


もはや逃げることさえ忘れ、イードに願うことしかできなかった。


「さらばだ、この地球ほしを喰い潰す者たちよ」


そして、イードはジャズの声など聞こえていないかのようにその右手を振り落とす。


夜空に浮かぶ無数の光が、まるで統制の取れた軍隊のように一斉に地上にいるジャズたちへ落ちてきた。


もう駄目だと、ジャズは思った。


だが、そのとき――彼女の耳に女性の咆哮が聞こえた。


「マスターズ·タイム……クロノスッ!」


それはメイカの声だった。


メイカは右目にはめ込まれた神具クロノスを発動。


右目の瞳がまるで時計のように、時針、分針、秒針と一から十二の英数字が刻まれ、その針が彼女の感情と呼応しているかのように恐ろしい速度で動く。


メイカは神具の力で時間を停止したのだ。


だがしかし、すでに彼女は神具の力を酷使していた。


そう――。


先ほどクロノスを使って未来を見たため、停止していられる時間は僅か数秒。


それでこの状況をどうすればいいのか、メイカは時を止める前から考えていたが――。


「今のあたしじゃ……全員を救えない……誰か救えばイードを倒せないッ!」

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