#544

メゾンマルジェラを外へ放り出すことに成功し、メイカを助けてミックスとロウルと合流したジャズ。


彼女は航空機の操縦席へ手をやると、皆に声をかける。


「どうやら自動操縦 オートパイロット に設定されてるみたいね」


ジャズの言葉を聞いたメイカは、先ほどから何度も訊いていることをたずねる。


「ねえ、ちゃんと戻れるんでしょ? あんた機械に強いみたいだし、早くなんとかしてよ。って、ちょっと訊いてるの?」


ジャズは先ほどまでの苛立った様子から一変。


冷静な面持ちで、操縦席にあったコンソールからメイカのほうへと振り返る。


「このままだとこの航空機は、イード·レイヴェンスクロフトのところへ行く」


「それはあたしもあの顔色の悪い女から聞いてる。だからこそ早く操縦してって言ってるんだよ。まだわかってないの? イードに神具を渡すわけにはいないってことが」


「わかってないのはあなたほうよッ!」


ジャズは当然声を張り上げた。


そして、メイカに詰め寄って人差し指をを突き付ける。


永遠なる破滅エターナル ルーインの精鋭は共和国を襲撃しようとしてる。さっきのメゾンマルジェラってとかいう女はその第一陣。これから大群がやって来ることは戦争の常識なんだ」


「なら、なおさら急いで引き返すべきじゃない! じゃないとバイオニクス共和国がストリング帝国を同じ運命を辿ることになっちゃうわよ」


「ここまで話してまだわかんないのッ!? あいつらの主力は共和国に向かっているのならこれはチャンスじゃない! 今なら奇襲がかけられる! ……マスターメイカ。こっちからイードを倒しに行きましょう!」


見つめ合う――いや、睨み合っていると言ったほうがいい。


ジャズとメイカは強張った形相のまま互いに目を合わしてる。


「あなたが行かなくてもあたしは行くよ。さあ、どうする? 協力するかしないか」


「……わかったわ。いいよ、協力してあげる……。やってやろうじゃない、ジャズ·スクワイア」


そんな二人を見ていたミックスはホッと胸を撫で下ろしていた。


彼は事態の深刻さは理解していなかったが、とりあえずジャズとメイカが協力すると思ったからだ。


「だけど、これだけは言っとくわ。あたしはあんたやあんたの彼氏が殺されようが、神具を守ることを優先する」


「当然でしょ。それがあたしらの任務なんだから」


「任務と来たか、これだから軍人は」


「あん!? なんか言ったッ!?」


「そんなことよりも覚悟したほうがいいわよ。あの法衣姿のゴリラは、きっとあんたたちが想像している以上に強いんだからね」

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