#531

その後もジャズのメイカへの苛立ちは止まらず、彼女はあることを訊ねる。


「そもそもあなたは未来を知っているのなら、どうしてノピア将軍に会いに来たの?」


ジャズはそのメイカの右目にあるという神具――クロノスで未来を見たというのに、何故バイオニクス共和国の状況を把握していないのだと言った。


さらにサーベイランス·ゴートが暴走していることを知っていて、戦いが終わるまでどこかでお茶でも飲んでいたのかと、メイカに喰って掛かる。


その言葉を聞き、メイカは悪びれることなくジャズに返事をする。


「それは、あたしが介入すると未来が変わってしまうからよ。だからサーベイランス·ゴートとの戦いに参加しなかったの」


「未来が変わってしまう? もしかしてバタフライ効果のことを言ってるの? カオス理論なんか持ち出して、本当はサーベイランスが怖くて隠れていただけなんじゃないの?」


「そう思いたければそう思ってろ。この石頭娘」


「誰が石頭娘よッ!」


再び口論を始め出すジャズとメイカ。


ロウルは呆れながらも二人の間に入り、今はやるべきこと――これから襲ってくる永遠なる破滅エターナル ルーインの対策を考えるべきだと言う。


「とりあえず話を戻そう。イード·レイヴェンスクロフトの狙いは、神具と、奇跡人スーパーナチュラルだ。ここにはブレイクとクリーン、ベルサウンド兄妹がいるんだろ?」


「クリーンは今……ストリング帝国に……」


「そうか……」


ミックスが答えると、ロウルは顔をしかめた。


すると、今度はメイカが話を始める。


現在バイオニクス共和国にある神具は、ブレイク·ベルサウンドが持つ小雪リトル スノー小鉄リトル スティール


呪いの儘リメイン カースであるロウルの処女ヴァージン


同じく呪いの儘リメイン カースであるリーディンが持つ経典アイテル。


「そして、私の右目にあるクロノスだ」


メイカの言葉に、あることに気が付いたミックスが口を挟む。


「ちょっと待ってメイカさん」


「メイカでいいわよ、適合者の少年」


「じゃあ俺のことはミックスで。それでね、ブレイクは今リトルたちと一緒にいないんだよ。たぶんだけど、クリーンのところじゃないかな?」


ミックスがそう言うと、メイカはそんなことかと言わんばかりに鼻を鳴らした。


そんな彼女の態度に、ジャズはまた腹を立てている。


「今はブレイク·ベルサウンドのところにあるはずだよ」


「なんでそんなことわかるの? 未来を見たから?」


両腕を組んだジャズがそう言うと、メイカは彼女の顔に自分の顔を近づけた。


そして、荒くなった鼻息を吹きかけながらジャズのことを睨み付ける。


「そうだよ。そして、未来が変わっていなければ、陶器オオヅキと聖剣ズルフィカール。さらに帝国にいた奇跡人スーパーナチュラルは全員イードに連れて行かれているはずだ」


少し顔を動かせば唇が重なる距離のまま言うメイカ。


ジャズはそんな彼女の発言に再び喰って掛かる。


「あなた……皆が連れて行かれることを知っていながら何もしなかったのッ!?」

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