#530

だが、ブラスターハンドガンからは何も発射されなかった。


ソウルミューが驚愕していると、彼の目の前にいたダブの姿が消えていく。


そして、それに続くようにイードの弟子たちと倒れていたプロコラット、シン、クリーンらもその場から消えていった。


この場に残っているのは、帝国兵士の死体と傷だらけのブロード――。


それと対峙しているイード、ソウルミュー二人だけとなっていた。


「さすがはブルースの息子といったところか」


イードはそう言うと、そのまま他の者たちと同じようにその場から消え去っていった。


ソウルミューは何が起きたのかわからないまま、ブラスターハンドガンを周囲に乱射。


辺りを破壊しながらダブのことを捜す。


「おい、どこへ行きやがった!? ダブッ! おいダブッ! 返事をしてくれッ! おい、おぉぉぉいッ!!」


だが、いくら大声で叫んでも何も返っては来ず。


ソウルミューの叫び声がただ辺りに響くだけだった。


――ストリング帝国が永遠なる破滅エターナル ルーインによって滅ぼされたとき。


ミックスとジャズは、突然現れたショートカットの女性メイカ·オパールと、ハザードクラスである非属ノン ジーナス――ロウル·リンギングと共に、バイオニクス共和国内の施設で話をしていた。


メイカは自分が見た未来により、ストリング帝国が滅ぼされたことを二人に伝えると、次にイード·レイヴェンスクロフトが狙うにはここ――共和国だと言う。


「ノピア·ラッシクはここにいるんでしょ? ヴィンテージの力を借りたいの。……というか、彼無しでイードを倒せるとは思えない」


だが、ジャズは彼女に説明する。


バイオニクス共和国は、国のシステムを管理していた人工知能――サーベイランス·ゴートの暴走によって半壊状態。


そのため共和国は機能を停止し、今は復旧に向けて動いている状況だと。


「あたしが当てにしているのはノピア·ラッシク、ヴィンテージだと言ったでしょ? 共和国の力なんて端から当てにしていない」


ジャズは傲慢な態度をとるメイカに苛立ちがらも、先に話したサーベイランスとの戦いでノピアが行方不明になっていることを伝えた。


それを聞いたメイカは、両手で頭を抱えて思いっきり壁を蹴った。


そんな彼女の態度に、ジャズはついに耐えきれなくなって声を荒げる。


「いきなり現れてなんなんのその態度は!?」


「世界が終わるかもしれなのよ! そりゃこうもなるでしょ!? クッソ……あたしが見た未来と状況が変わって来てるってことか……」


「さっきからなんなのよ!? 未来を見たってッ!? 時の領地タイム テリトリーのマスターだがなんだから知らないけど、そんな話を信用しろっていうの!?」


「ったく、話にならないわね。まあ、あんたみたいな小娘に、神具のことを理解しろってのが難しいかもしれないけど」


メイカはジャズに近づくとその両手を動かしておどけてみせた。


まるで子どもをからかうような仕草をした彼女に、ジャズは拳を振り上げると――。


「うわぁぁぁッ!? ダメだよジャズッ! 手なんか出したらッ!?」


「おいメイカ、お前もだぞ。なんでそんな怒らすような真似をすんだよ?」


ミックスが慌てて彼女を止め、ロウルがメイカの態度を注意した。


二人が止めに入ったおかげでさすがに喧嘩は始まらなかったが。


その場の雰囲気が、けして良くなったわけではなかった。

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