#525

「待てよダブ! ちょっと待てってば!」


ソウルミューは走るダブに追い付くと彼の肩に手をやり、強引に止めた。


そして、自分のほうを身体を向けると目を見つめて言う。


「お前が行くんならオレも行くよ。だけど、あれだ……兄貴を救出するにも作戦はいるだろ? そう、オレが考えるイケてる作戦がさ」


ソウルミューは普段の陽気な口調で、ダブを落ち着かせようとした。


だがダブは変わらず、その表情をしかめたままだ。


「そう言ってくれるのは嬉しいけど……。もう兄上を助けるどころじゃなくなったんだよ」


そう言い、再び早足で歩き始めるダブ。


ソウルミューはそんな彼の隣に並びながら声をかける。


「どころじゃないって、どういうことだよ?」


「お父様が来たんだよ。急がないと間に合わなくなる」


ダブはソウルミューの顔を見ることなく説明を始めた。


彼の父である永遠なる破滅エターナル ルーインの最高指導者――イード·レイヴェンスクロフトがストリング帝国に信者を連れてやってきたこと。


そして、それはある儀式を行うことを意味していると、その繊細で端麗な顔を歪めて言う。


説明を聞いてもよく理解できないソウルミューは訊く。


「お前の親父がここに来てんのか? じゃあ、街が燃えてんのも永遠なる破滅エターナル ルーインの仕業か。それで、そのある儀式ってなんなんだよ?」


「ソウルミュー……。君にお願いがあるんだ」


ダブはそう言うと当然足を止めた。


ソウルミューはそれに反応できずに、早足で歩いていたせいかつまづきそうになりながらもなんとか踏ん張る。


「お願いってなんだよ? まあ、オレに不可能なことなんてこの世にはないし。お前の頼みならなんでも聞いちゃうけどな~」


「茶化さないで真面目に聞いてッ!」


両手を動かしながらふざけるソウルミューを見たダブは声を荒げた。


そして、今度はソウルミューの目を見つめてその口を開く。


「これから僕は兄上を殺すかもしれない……。それと、もし失敗して……僕がお父様に捕らえられときは……」


「捕らえときは助けろってんだろ? 任せとけって、オレを誰だと思ってんだよ。そんなことは言われなくったって――」


「僕を殺して欲しいんだ……」


「えぇッ!?」


ソウルミューは先ほどの説明だけでなく、今ダブの言った意味も理解できなかった。


だが、こういうときこそ冷静にならねばと、いつもの調子で返事をする。


「あ、あぁ……オッケー。殺せば……いいんだな? よ、よ~しやっちゃうよ~。獣みたいにとことんね。ナイン·インチ·ネイルズのクローサーばりにやっちゃう」


「だから真面目に聞いてって言ってるだろッ!」

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