#523
次第に生気を失っていくイードと
プロコラットはヘルキャットとアリアに、今のうちにここから出て、ユダーティーと共に住民たちを逃がすように言う。
「あとは任せろよ。お前らは早くユダーティーに手を貸してやってくれ。それとシンとクリーン、ブロードも連れてな」
自分以外の全員を連れて出ろと言うプロコラットに、ヘルキャットとアリアが声を荒げる。
「一人でやるつもりッ!? いくらあんたが
「ヘルキャットの言う通りですッ! ここは協力して全員でこの男をッ!」
ヘルキャットとアリアの言うことは最もだと思われる。
だが、プロコラットは理解していた。
この
「少なくとも、我が息子とヴィンテージの娘。そして、お前は逃がすわけにはいかんな、プロコラット」
イードはそう言うと、光を纏った右足で地面を思いっきり踏みつけた。
すると、その光がプロコラットの張った結界に干渉し、目で見てわかるように結界が崩れていく。
「ったく、どうなってんだよおっさんの身体はよ」
冷や汗を流しながら笑って見せるプロコラット。
そんな彼にイードはゆっくりと向かっていった。
「帝国軍人が他国の者とこうも友好的になったか。どうやら私が知らないところで世界は変わっていっているようだな」
イードは息子であるシンがプロコラット、クリーンに協力していることや、帝国軍人であるブロードたちとも親密に見えたことを口にした。
そして彼は、年齢も性別も出身も立場も違う者たちが、どうしてこうも手を取り合えているのかと、プロコラットに訊ねる。
「そんな難しいこと、頭の悪い俺にわかるはずねぇだろ」
そう言い返し――。
「でもよぉ、おっさんが言っている歳とか男とか女とか生まれとかよぉ。そんなの仲良くなっちまえば関係ねぇんじゃねぇか? 少なくとも俺はそう思うぜ」
プロコラットの答えを聞き、イードは両目を瞑った。
それは今プロコラットが口にした言葉を噛み締めているように見える。
「プロコラット……。そう言えるお前は加護を受けるに値する者だ」
「そう言ってくれるのは嬉しいが、これは俺だけじゃ出せなかったもんでな。ある男に教えてもらったとこが多いんだ」
「ほう、純粋な
「ああ、そいつはよぉ。ケンカがよぇくせに何度も向かってくんだ。困ってる奴や傷ついている奴を守りてぇってよ。そして、それがたとえ今の今まで殴りあってた奴であってもな」
プロコラットがそう言うと、ブロード、クリーン、シンが彼の傍に並んだ。
三人ともすでに深い傷を負っているようだったが、その表情に痛みの色はない。
「おい、プロコラット。それはあいつのことか?」
――ブロード。
「あの人以外にいないですよ、ブロードさん」
――クリーン。
「ふん、殺すべき相手に本気で手を差し伸べる愚か者など、あいつしかいない」
――シン。
そして、互いに言葉を交わし合う。
イードはそんなプロコラットたちを眺め、悲しみに満ちた顔をすると、再び掌から光を放ち始めた。
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