#518

――メイカとロウルがジャズたちの前に現れる数時間前。


イード·レイヴェンスクロフトは永遠なる破滅エターナル ルーインの信者たちを連れ、ストリング帝国に乗り込んでいた。


現在イードは大型輸送機に乗ったまま、状況を眺めている状態だ。


「イード様。我々が一番懸念していたローズ·テネシーグレッチは、アンビエンス皇子とイーキュー皇女を連れて逃亡したようです」


一人の信者が片膝をつき、イードに頭を下げて報告。


それを聞いたイードは、椅子に座ったまま笑みを浮かべる。


「ヴィンテージは国を捨て逃げたか。奇跡人スーパーナチュラルと神具は見つかったか?」


訊ねられた信者は顔を上げると、イードの息子であるシン·レイヴェンスクロフトが捕らえられている場所が見つかったことを伝える。


そして、現在幹部の者らがそこへ向かっていると言葉を続けた。


「生きていたか、我が息子。狙いは奇跡人スーパーナチュラルと神具だ。後は放って置け。邪魔する者は誰であろうと皆殺しにしろ」


イードの言葉を聞いた信者は一礼してから立ち上がる。


それから周囲にいた者たちを連れ、その場を去っていった。


「まずは三人。いや、四人だな。ストリング帝国は今日で終わる。そして、次はバイオニクス共和国だ」


イードはそう言うと椅子から腰を上げ、大型航空機から燃えるストリング帝国を見下ろすのだった。


――イードが信者から報告を受けているとき。


帝国内では、スピー·エドワーズ大尉がストリング兵に指示を出して奮闘していた。


だが、突然の襲撃とあまりのテロリストの数に明らかに劣勢だった。


「くッ!? ローズ将軍は何をやってるんだッ! ノピア将軍がいないのだからあの方が率先して帝国を守らなけれいけない立場だろう!」


向かってくる信者たちに応戦しながらスピーは叫んだ。


そこへ三人の若い将校が現れ、スピーたちの前にいた信者らを撃ち殺す。


三人共、スピーや帝国兵と同じく深い青色の軍服だったが。


その軍服には薔薇の刺繍が施されていた。


「こんな雑魚にずいぶん手こずってんな」


「しょうがあるまい。大尉は戦場などろく知らんのだからな」


「でも、結構いい男だよねぇ。つまみ食いしちゃおうかな~」


その薔薇の刺繡がある軍服の三人は、ローズ·テネシーグレッチの親衛隊――。


コーダ·スペクタ少尉、アバロン·ゼマティス少尉、ネア·カノウプス少尉の三人だった。


スピーは三人を見るなりに声を張り上げる。


「おいお前たちッ! ローズ将軍はどうした!? あの方は今何をしてるッ!?」


「あん? 助けてやったのに礼も無しかよ」


「貴様ッ! 上官に向かってその口の利き方はなんだッ!」


コーダの態度にスピーがさらに声を荒げると、アバロンが前に出てきた。


ネアも彼の隣に並び、スピーの顔を見て恍惚の表情を浮かべては息を荒くしている。


「申し訳ありません、スピー大尉。私たちはローズ様から伝言を預かってここへ来ました」


「伝言だと?」


「ローズ将軍は皇子と皇女両名を連れて帝国から脱出しました。そして、殿しんがりはあなたに任せると」


「なんだと!? 将軍が国を捨てるつもりかッ!?」


ローズから伝言にスピーは激昂。


だが、アバロンら三人は彼を無視して背負っている飛行装置――ジェットパックを起動させる。


「報告は以上です。では、我々はこれにて」


そして、アバロンがそう言うと三人は飛んでいってしまった。


残されたスピーは納得ができないといった表情のまま、ともかく兵を纏めようと指示をだそうとしていると――。


そこへ通信が入ってくる。


《こちらブロードだ。スピー大尉、至急こちらへ応援に来てくれ》


通信してきたのは、帝国の将校――ブロード·フェンダー大佐だった。


スピーはブロードの状況を確認しようと訊ねると、彼が答える。


《シン·レイヴェンスクロフトのいるところだ。幹部と思われる連中が来てこれ以上抑えきれそうにない》

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