#515

サーベイランスは震えていた。


砕かれた顔面に手を当てて、彼は初めて恐怖を感じてしまっていたのだ。


ミウムはそんなサーベイランスを掴んで立たせると、まずその胴体へボディブロー。


くの字に曲がったサーベイランスはグハッと呻く。


「お前は……そうか。未来から来たとかのたまっていた女だな。たしかグレイファミリーを殺すために来たとか……」


「ああ、そうだ。だがグレイファミリーはすでにお前に始末されてしまったようだな」


ミウムはそう言うと左ジャブから右ストレート。


砕けていたサーベイランスの顔がさらに破壊され、再び吹き飛ばされていく。


それでもなんとか立ち上がろうとするサーベイランスだったが、震える足のせいで上手く立ち上がることができないようだった。


「おい冗談じゃないぞッ!? たかが適合者がどうして私よりも強いんだッ!?」


怯えを隠すように声を張り上げるサーベイランス。


だが、その姿はもはや先ほど軽快に言葉を発していた者とは思えないほど狼狽えているものだ。


その様子を見ていたブレイクは、ミウムの異常な強さに舌を巻いていた。


いや、ミウムが強いことは知っている。


だが、彼女はマシーナリーウイルスの力や先ほど見せた大地を操る力を酷使すると、体内のウイルスが暴走して機械化してしまうという弱点があったはずだ。


それが、今のミウムは全く機械化することなく全開で力を解放している。


そのことをブレイクが不思議に思っていると、サービスが口を開いた。


「ミウムの体内にあるウイルスはあたしが抑えてるんだよ。だから今のミウムは制限なしで力を解放できる」


「そりゃ……全開のあいつに勝てるヤツなんていねぇよな……」


納得したブレイクだったが、それにしても圧倒的なミウムの力の前に驚いたままだった。


ミウムの一方的な攻撃はまだ続いていた。


サーベイランスは何度も反撃しようと、あらゆる攻撃を仕掛けた。


多くの戦闘データから得た格闘術。


掌や胸部から発射できるビームなどたとえ特殊能力を持つ者でも敵わない力を使ったが、それらはすべてミウムの前では無意味だった。


腕を振り上げればその前に殴られ、蹴りを放とうとすればその足を砕かれ、ビームは機械の腕で弾かれてしまう。


「こんなはずでは……こんなはずではないぃぃぃッ!!」


もはや打つ手がないサーベイランスはただ叫ぶことしかできなかった。


ミウムはそんなサーベイランスを冷静に破壊していく。


「グレイファミリーがお前を造ったと聞いた。もしかしたら私の目標はお前だったのかもな。……人類の未来のためにここで破壊する」


「人類の未来のために必要なのは私だッ! 私こそが世界に平和を、この地球ほしを救うことができるのだぁぁぁッ!」


ミウムは狂乱して飛び掛かって来たサーベイランスの身体を拳で貫き、そのコアであるルーザーリアクターを抜き取った。


すると、サーベイランスの目の光りは消え、そのまま行動を停止した。

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