#495

「アーティフィシャルタワーが……爆破された……ッ!?」


凄まじい爆発音と共に、崩れていくアーティフィシャルタワーを遠くから見ていたミックスとジャズは、突然のことに唖然としていた。


倒した特殊能力者の少年と少女を抱えて避難させた住民のところへと戻っていたミックスとッジャズは、監視員バックミンスターの隊員に二人を預けると、すぐに前線にいるウェディングとリーディンの下へ向かう。


街中を駆けながら、ジャズはノピアへ通信。


だが、上官からの応答はない。


「ノピア将軍ッ! 一体何が起きたんですか!? ノピア将軍ッ!」


イヤホンに付いたマイクに叫び続けてもノピアから返事はない。


それどころか、サービスがバイオニクス共和国の全システムを取り戻したというのに、ノピアとアーティフィシャルタワーへ向かったベクターや前線にいるウェディングたちとも連絡が取れなくなっていた。


「クソッ! どうなってるんだよ! サービスがサーベイランスをネットから締め出したんじゃないのッ!?」


ジャズが表情を歪めると、ミックスは心配そうに声をかけた。


「ジャズ、今はウェディングたちのところへ急ごう。みんなのところへ行けば何かわかるかもしれないし」


「わかってるよ!」


余裕がないのか、怒鳴り返すジャズ。


いつもならここでミックスも言い返して口喧嘩が始まるのだが。


ジャズの心情を察しているのだろう。


ミックスは彼女に何も言わなかった。


今は考えるよりも仲間と合流することだ。


ミックスとジャズはそう思いながら、ウェディングとリーディンがいる前線へと向かった。


――その頃、前線では。


ブレイク、ウェディング、リーディン三人が特殊能力者たちを制し、命を奪うことなく彼らの拘束に成功。


そして、戦闘用ドローン――ナノクローンを破壊し、散開していく機械人形に追撃するかどうか話していた。


「ねえ、どうする? タワーの爆発から誰にも通信ができなくなってるんだけど」


リーディンがブレイクとウェディングに訊ねたが、二人もどうしていいかわからないでいた。


最前線を死守していた三人の仕事は予定以上にうまくいっている。


アーティフィシャルタワーへ向かったサービスの護衛チームのほうも、先ほどのノピアの通信を聞くにサーベイランスから共和国のシステムを取り戻し、ネットからも締め出すことに成功しているはずだ。


だが、突然のアーティフィシャルタワーの爆破。


さらには他のチームと連絡が取れなくなり、現在の状況が良いの悪いのか、三人は把握できる術がなかった。


「今はこの子たちを避難させましょうッ!」


ウェディングが叫んだ。


彼女は今は先ほどまで戦っていた特殊能力を持つ子どもたちを、安全な場所へと移動させるべきだと二人に言う。


「そうだな。とりあえず、こいつらを……」


ブレイクが返事をしたそのとき、突然空から人が降って来た。


三人の前に放り投げられたかのように飛んできたその人物は、血塗れになっているベクターだった。


「おい! おっさん!?」


「どうしてこんな……。なにッ!? 一体が起きているのッ!?」


ブレイクとリーディンがベクターに駆け寄ると――。


「見つけたぞ、罪人ども……」


デジタル加工されたような声が聞こえてくる。


ブレイクとリーディンが声のするほうを振り向くと、そこには空から降りて来る人型の金属――サーベイランス·ゴートがいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る