#496
サーベイランスはコンクリートの地面に降りると、ブレイクたちの前に立った。
血塗れのベクターに駆け寄っていた三人は、それぞれ武器を出して身構える。
「うん? なんだブレイク·ベルサウンド。今日は犬たちを連れてないのか?」
サーベイランスは、まるで偶然にも散歩中に会った隣人のように声をかけ始める。
そして、ブレイクの次は隣にいたリーディンにも語りかける。
「リーディンのほうはちゃんと本を持っているようだな」
「何よあんた、神具でも欲しいわけ?」
リーディンが訊ねると、サーベイランスは話を始めた。
偶像の根絶は、これから自分たち人工知能が管理する世界に絶対不可欠なのだと。
「そのために、当然お前たちも排除せねばならない。この世にいるすべて特殊能力者たちは、我らの管理する世界に不必要な存在なのだからな」
「そうか。だから能力者じゃないおっさんは殺さないでオレらの前に連れてきたのか」
「わかるかブレイク·ベルサウンド? さすがはハザードクラス。最も優秀な人間といわれるだけはある」
サーベイランスは感心した様子で両腕を組むと、再び話を始めた。
ベクターのやろうとしていたこと――
特殊能力者を国に登録するというアイデアは悪くなかった。
これまでに生み出された特殊能力者たちを管理、そして使役する。
それは、このバイオニクス共和国の研究結果――子どもを人体実験に使っていた罪を洗い出し、さらにその子らに居場所を与えるということに他ならない。
「だが、やはり人間は間違える。その最もたるは暗部組織の解体だ」
そこからサーベイランスのベクターへの批判が始まる。
ベクターは共和国内にあるすべての暗部組織を解体し、国の浄化を目指した。
そして、新たな組織バイオビザールに加入させようとした。
しかし、組織への参加は個人の意思が尊重されている。
つまりベクターは、個人の自由を優先したように見える。
「では、登録法に反対した者はどうなる? そもそも暗部という居場所に自分の価値を見出だしていた者が、ベクターのいう考えに納得できるのか? いや、それは無理だ」
サーベイランスは倒れているベクターに人差し指を向ける。
「明と暗……光と闇は本来人間に両方備わっている。それを浄化と言って清潔なところへ押しやろうとしても反抗され、暗部にいた者はさらに深い闇へと落ちていく。フフフ、所詮そいつに日陰者の気持ちなど理解できないのだ」
そして、サーベイランスは両手を大きく広げ、ブレイクとリーディンを見て言う。
「私なら理解できる。人間を平等に見てやれる。分かりやすくいえば
その言葉に動揺するブレイクとリーディン。
サーベイランスはそれを見逃さずに、二人に訊ねる。
「お前たちなら理解できるだろう? 私の言っていることが……なあ?」
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