#489

サービスは掴んだ頭からサーベイランスの人工知能へと侵入。


自分の意識を移し、彼の電子頭脳がバイオニクス共和国の電子機器やネットワークに干渉できないようにセキュリティ対策を行い始める。


「私をネットワークに入れないようにするつもりか!?」


サービスから手を放し、彼女を引き離そうとするサーベイランスだったが、すでに実行されたプログラムにより、彼は今まで繋がっていたネットの世界から締め出された。


特殊能力者の子どもたちを相手にしながらも、その様子を見ていたノピアは、分かれて戦っている全員へ通信を入れる。


「サービスがサーベイランスをネットから遮断した。もう奴はネットを介して自我を逃がすことはできない」


まだ通信中のノピアに、特殊能力者の子どもたちは囲むように周りを固めると、その手を翳す。


そして、その翳された掌からは炎、水、風など放たれて彼へと向かっていく。


「後は残らず機械人形とドローンを破壊すれば作戦は終了だ。各自その才能を絞り尽くして事に当たれ」


周囲三方向から飛んで来る攻撃に対して、ノピアはまず風の刃を躱し、その勢いで水圧カッターのような水をピックアップブレードで切り裂く。


それからブレードを振った勢いを利用して、背中から飛んできていた炎を相殺。


さらに飛び掛かって来ていた前衛の子どもたちを突進して吹き飛ばす。


そのとき彼らの上では、サービスによってネットワークから締め出されたサーベイランスが、彼女の小さな身体をまるでドッチボールの球のように壁へと投げつけていた。


ただでさえ半壊しているタワー内の壁を突き抜け、サービスは下の階へと落とされる。


「ぬぅ……。無駄なことをする。たとえ国内のシステムを掌握できずとも、お前ら如き今の戦力で十分始末できるぞ」


サーベイランスは、落ちていったサービスへと近づいていった。


倒れていたサービスは身体を起こして宙へと浮かぶと、その黒かった長い髪が次第に金色へと変わっていく。


そして、彼女の身体はまるで太陽のように光り輝き始めた。


「させない……始末なんて……絶対にさせないッ!」


「お前を失いたくないが、こうなってはしょうがない……。私も全力で戦わせてもらう」


サービスが完全に戦闘態勢へと入ったことを確信したサーベイランスは、胸の金属ボディ部分を開いた。


そして、その開いた部分に見えるのは、サービスと同じように金色に輝いた円形の照明。


その周りにはサーベイランス·ゴートと彫り込まれおり、ケーブルとプラグが入り混じっている。


この円形の照明のようなものの名は、ルーザーリアクターという。


ルーザーリアクターとは、自然からのエネルギー技術を用いた永久発電機関。


かつてバイオニクス共和国の上層部の一人であり、グレイファミリーでもあるアイスランディック·グレイが開発した、けして止まることのない動力炉だ。


サービスとサーベイランスの心臓部には、このルーザーリアクターを使用されている。


「これが最後のチャンスだサービス。私の下へ来い」


「あたしは人間たちを……すべての命を守るッ!」


全身を黄金に輝かせた二体の人工知能は、その光を纏ったまま激しくぶつかり合った。

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