#438
――アルマー兄弟を倒したメイカとロウルは、神具を探しに出ている信者たちが戻って来る前に
今は
「メイカ、これからどうするつもりだ?」
ロウルは、崩れた里長の屋敷から見つけた本を集め、それ火を付けるメイカに声をかけた。
そこにいる彼女は、今まであれだけ感情に任せて行動していた女性とは思えないほど落ち着いている。
畑は踏み荒らされ、住居は破壊され、あれだけ豊かだった
それでもメイカは、静かに燃えるクオの本を眺めながら返事をする。
「マスター·クオは死んだ……。もう世界を見守る人はいない……準備がいるわ」
「そうだな……」
彼女の言葉にロウルを悲しい声を出した。
彼はクオが殺されていたであろうことは知っていたが、改めて事実を聞き、友人の死に想いを
本が燃え尽きるのを確認したメイカは、振り返ってそんなロウルの顔を見る。
「あたしは天才で、この
さも当然のことように言う彼女に、ロウルは思わず吹き出してしまう。
笑い始めたロウルを見たメイカは、不可解な顔で彼のことを見返す。
「いや、わりぃ。つい安心しちまってよぉ。どうやらお前さん、中身まで別人になっちまったわけじゃなさそうだったからさ」
そんな彼を見て頬を膨らませるメイカだったが、すぐに表情が崩れてロウルと共に笑い始めた。
「ロウルさん……。共和国のことや帝国のことを教えて。あと、この状態はあたし一人じゃ手に負えない……。お願い……。迷惑ばかりかけちゃっているけど、手を貸して欲しいの……」
「もちろん手を貸すに決まってんだろ。もう、お前さん一人の問題じゃない。こいつは世界の――俺たちの問題だ」
ロウルは自分の両手の拳をガツンとぶつけて音を響かせた。
メイカはそんなロウルを頼もしく思うと、釘を刺すように言う。
「そういえばさ。よくロウルさんが言ってるお前さんってやめてくんない?」
「なんだよ? 気に入らなかったか? じゃあ名前て呼ベばいいか?」
「そうねぇ……」
メイカは着ている道着のズレを直すと、姿勢を正して口を開く。
「メイカ……。あたしは今日からマスター·メイカを名乗る」
――その頃、信者たちが戻って来た
時折呟くような声を出しているが、死体となった兄へと声をかけ続ける彼に、信者たちは何も言うことができなかった。
「兄ちゃん、ねえ兄ちゃん……。いつまで寝てんだよぉ……。早く、起きてくれよぉ……」
焦点の合わない目で亡き兄の
だが、涙を流している彼は、
しかし、それでも認めたくないのだろう。
もしかしたら返事が来るかもしれない。
急に目を覚まして起き上がって来るかもしれないと考えると、エンポリは声をかけることを止められなかった。
だが、何度声をかけようが返事のない
「あの女……メイカとかいう馬鹿女のせいだッ!! 殺してやる! 絶対に……絶対に絶対に絶対に兄ちゃんと同じ痛みをあいつに味合わせてやるからなぁぁぁッ!!!」
そして、このときにエンポリ·アルマーの生き甲斐は、史上最強のマスターとなったメイカ·オパールを殺すことに変わったのだった。
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