#422

――ジョルジとエンポリのアルマー兄弟が永遠なる破滅エターナル ルーインの入信する前。


二人は両親と共に牧場を営んでいた。


彼らの牧場には、牛、羊、鶏の家畜から――。


犬や猫なども飼っており、アルマ―兄弟は、生まれた頃からずっと動物が身近にいるのが当たり前だった。


牛の乳を搾り、羊の毛を刈り、鶏からは卵を得て、それで生活をしていた彼らの家族は、合成種キメラという人型の怪物が世界中を覆っていた当時からそれなりに裕福に暮らしていた。


ジョルジとエンポリの両親は、育てている動物の肉を食べることはなかった。


それは、別に菜食主義者ベジタリアンだったわけではない。


ただ、牧場で飼っていた動物たちは、彼ら一家にとって生命線であると同時に、情が移っているのもあって家族のように思っていたからだ。


そんな環境で育ったアルマー兄弟も、当然動物を愛し、そして木々や川などの自然を愛した。


眠るときには犬と猫を抱き、ときには牛、羊、鶏のいる小屋で朝日を迎えるときもあったくらいだ。


ジョルジとエンポリ二人は幸せだった。


愛し合う両親に育てられ、多くの家族に支えられ、ときに面倒をみる生活は、たとえ世界が崩壊しつつあった状況でも気にならずに毎日笑顔でいれたのだ。


「ねえねえ兄ちゃん。俺たちが大きくなったらさぁ。もっと牧場を大きくして動物を、家族を増やそうよ」


「そうだな、エンポリ。俺たちが大人になったら、世界中の動物をこの牧場に集めよう」


二人はいつも未来のことを話していた。


自分たちが成人したら、両親にはゆっくりしてもらい、この牧場を自分たちで切り盛りする。


そして、いろんな種類の動物たちをこの牧場で育てるのが、彼ら二人の夢だった。


ジョルジとエンポリの両親は、そんな息子たちのことを微笑ましく思い、いつかこの牧場を継いでもらおうと考えていた。


そんなある日――。


ジョルジとエンポリは珍しく二人だけで、牧場近くの川に泳ぎに行っていた。


その日は久しぶりの暖かい日だというのもあったのだろう。


いつもなら犬や猫も連れて行くのだが、その日の彼らは気持ちが先走っていたので、陽が落ちる前にと慌てて川へと向かった。


「ねえ兄ちゃん。みんなも連れてくればよかったね」


「今日で最後ってわけじゃないさ。次に来るときは動物たちも連れて来よう」


遊び疲れて牧場に戻ってきた二人は、そこであり得ない光景を目にする。


「に、兄ちゃん……」


「なんだよこれ……? なんだよッ!?」


それは、彼らが住んでいた牧場が火の海に包まれたからだった。

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