#423
両親とアルマー兄弟が眠る丸太の建て屋――。
牛、羊、鶏の小屋も――。
さらに牧場の柵も中に生えている草もすべてが真っ赤に燃えている。
「父さんッ! 母さんッ!」
「兄ちゃん待ってよッ!」
立ち尽くしてしまっていたジョルジは我に返ると、大慌てで両親がいると思われる丸太小屋へと向かった。
弟のエンポリは泣きながらそんな兄の後を追いかける。
火が回って崩れそうになっている小屋の扉を開け、二人が中に入ると――。
「そ、そんな……」
「父さんと母さんが……うわぁぁぁんッ!」
両親は丸太小屋の中で死んでいた。
父は頭に包丁が突き刺さっていて、母は殺す前に犯されたのだろう。
着ている服が破かれており、ところどころ肌が露出した状態で、顔が原型がないくらい腫れあがっている。
美しかった母の姿にショックを受けたのか、エンポリはその場で泣き喚きながら動かなくなってしまっていた。
「誰だよ……こんなことしたのは……。父さんと母さんがなにをしたんだよぉ……」
ジョルジのほうは、震えながらも父や母の身体に触れ、その身を震わせて涙を流している。
だが、彼は歯を食いしばり泣き喚いているエンポリの手を引いて丸太小屋を出ていく。
両親はもういない。
これからは自分が弟を――家族守るのだと、燃える牧場の中でまだ生きているかもしれない動物たちを探そうとした。
それはまだ幼いながらも長男としての意志を見せたジョルジの決意だった。
だが、丸太小屋から外に出ると、そこには見覚えのある男たちの姿があった。
「村の人たち……? なんで……?」
その男たちは、ジョルジとエンポリの両親が、牛の乳や羊の毛、鶏の卵を売りに行っていた村の男たちだった。
男たちの体は真っ赤に染まっており、その手には牧場の家畜たちが持たれている。
恐怖で自分にしがみついてくる弟を抱きながら、ジョルジは理解した。
「お前らが……お前らが僕らの家族を……」
男たちは訊いてもいないことをジョルジとエンポリに話し始める。
反帝国組織か帝国だかわからないが、突然現れた軍人たちにより村が略奪された。
食糧は奪われ、女は犯され、その後村人はすべて殺された。
自分たちはなんとか逃げてきたのだ。
そこで、アルマー家の存在を思い出した彼らは牧場を襲撃。
餓えと絶望で我を失っていた彼らは、ジョルジたちの両親を殺して牧場の家畜を食らう。
そして、今度はジョルジとエンポリをもその手には掛けようとしていた。
ジョルジは何故優しかった村人たちがこんなことをするのかわからなかった。
ただそのときの彼は、鉈を持って向かってくる男たちを見て、燃えていく牧場以上に激しい怒りの炎をその心に舞い上がらせていた。
「許さない……絶対に許さないぞッ!!」
叫ぶジョルジと震えるエンポリの頭に鉈が振り落とされた。
だが次の瞬間、牧場を襲った男たちの体がバラバラに吹き飛んでいく。
ジョルジは何が起きたのかと、目の前を見ると、そこには法衣を纏った屈強な男が立っていた。
「あ、あなたは……?」
震えるながら訊ねたジョルジに、屈強な男は答える。
「私は罪人をすべて根絶やしにする神の使いだ」
その後、アルマー兄弟は男についていき、
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