#413
それから陽が落ち――。
再び神具――
二人ともかなり酒を飲んだせいか、顔が真っ赤になってしまっている。
「やっぱお酒はサイコーッ!」
メイカは享楽町ハシエンダに訪れたことが余程楽しかったのか。
真っ黒なバイクのハンドルを握っているロウルに、また行きたいと声をかけていた。
「今度はあたしも町のこと手伝うよ。お金だって……」
「金はお前さんが気にするとこじゃねぇよ。そこは俺が町の奴らに支払っている食事代とかでなんとかなってる。それにさっき話しただろ?」
ロウルがそう言うと、後部座席にいたメイカは彼の背中に寄りかかった。
そして、思い出したかのように申し訳なさそうな顔で弱々しく呟く。
「あたし……里のみんなに酷いことしちゃったかも……」
「そこに気が付けただけでも大したもんだ」
そこから、二人の間に沈黙が続いた。
暗くなった空には星と月が輝いている。
メイカはそれらを見ながら、今までどうしてこんな綺麗なものに気が付かなかったのだろうと思っていた。
「お前さんは……」
しばらくして、先に口を開いたのはロウルだった。
「お前さんは悪くない。悪いのは環境だったと、俺は思うぜ」
ロウルは変わらぬ穏やかな声でそう言った。
そんな彼の大きな背中に顔を埋めながら、メイカが口を開く。
「ロウルさん……。あたし……里に戻ったら、もう少し皆に優しくできるように頑張ってみる……」
「おう、やってみな。とりあえず焦らずにな」
二人はそう言って笑い合うと、
メイカを里に降ろしたロウルは、再び空へと飛んでいく。
宙に浮きながら彼は、メイカに小さな紙きれを投げ渡した。
「そこに俺のエレクトロンフォンの番号が書いてある。なんかあったら連絡くれよ。また一緒に酒でも飲もうぜ」
「うん。またね、ロウルさん」
そして、ロウルは
夜の山の中を一人歩くメイカは思う。
自分にロウルのような他人のことを考える余裕があれば、オーデマやパテックたちにあんな態度を取ることはなかっただろうと。
ロウルがハシエンダの人たちにしていたことを見て、自分が彼らの立場だったら、同じことをしていただろうと。
今さらながらそれが同情ではなく、二人の優しさだったことに気が付いていた。
「……二人に謝らなきゃ」
メイカは拳をグッと握ると、里に戻ったらすぐに二人に謝罪することを決めた。
そんな決意をした彼女が、戻った
「ちょっと……なんなのよこれッ!?」
崩れた家の周りに倒れている里の住民たちの死体だった。
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