#412
それからメイカはロウルに訊ねた。
何故あなたはボランティア活動などをしているのかと。
メイカは牢屋に入れられる前に、恋仲であったラヴヘイトから
自然環境を良くしようと活動していることを聞いていた。
今さらながら、彼の人柄を知って気になったのだろう。
ロウルはビールの入ったグラスを片手に答える。
「そんなの考えることもねぇよ。困っている人がいる、自然が壊されている、理由はそれだけで十分過ぎる」
その答えに――。
メイカは想像していたロウルのイメージを変えることになった。
彼女はロウル·リンギングという男のことを、さぞ人助けをして
それが間違った認識ではなかったと、今でも思う。
しかし、このモジャモジャ頭の男は、助けられる側の人間が施しを受けたときに何を感じるか。
そして、ただ与えられる人間がどう思うのかをちゃんと考えているのだ。
「今度はこっちの番だ。お前さんのことを聞かせてくれよ」
ロウルはグラスに入ったビールを飲み干すと、メイカに訊ねた。
どうやら彼はラヴヘイトとは顔見知りらしく、
「あなた! ラヴヘイトと知り合いなのッ!?」
バンッとテーブルを両手で叩いて身を乗り出すメイカ。
そんな彼女にロウルはガハハと笑って見せる。
「おいおい、こっちの質問が先だぞ~。早く話してくれよ。あいつ、ラヴヘイトの奴は共和国にいた頃から女にモテていたが、誰かと恋人関係になったことはなかったからな」
メイカはその言葉を聞き、自分でも無意識に不機嫌だった顔が
彼女は嬉しかったのだ。
ラヴヘイトにとって、やはり自分が特別だったという事実に。
ラヴヘイトは顔立ちの整った長身の青年で、その身のこなしもジャケットの着こなしも洗練されている。
少々口は悪いが、そこも女性を惹きつけるところであると、メイカは思っていた。
そんな彼にとって、自分が初めての恋人だと知ったメイカの表情が緩んでしまったのは、恋する人間ならばしょうがないことだろう。
「彼とは……彼が大学の課外活動で、
恥ずかしそうに口を開いたメイカに、ロウルは笑みを浮かべながらも茶化すことなく話を聞いていた。
酒を飲んでいたのも、その前にロウルが自分のことを話していたことも、彼女がラヴヘイトのことを話す気持ちになった理由だった。
最初からプライベートなことを訊かれても、メイカはきっとロウルにラヴヘイトのことを話はしなかっただろうと思われる。
「それで、彼がマスターの屋敷に来てから、あたしに興味を持ってくれたみたいで……」
「ほう、じゃあラヴヘイトの奴からメイカにアプローチしたのか? 意外だな。てっきり俺はお前さんのほうからかと……」
「あたしはそんな軽い女じゃないよッ!」
ロウルにメイカと呼ばれることを嫌がっているように見えた彼女だったが。
いつの間にか全く気にならなくなっていた。
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