#410
それからしばらく空を飛んでいたメイカたちは、ある小さな町で食事を取ることに。
しかし、その町はまるで大災害の後か、戦争で起きたのかというくらい崩壊寸前の町だった。
メイカはこんなところにレストランあるはずがないだろうと思っていると――。
「ここは享楽町ハシエンダって言うんだ」
ロウルが声をかけてきた。
どうやら彼は、崩壊寸前だとわかっていてこの町へ来たようだ。
それからロウルが言うに、この町は世界でも有名なテロ組織であり宗教団体でもある
少し前までは、国にいられなくなった者たちなどが集まって作られた町だったらしい。
だが、先ほど出てきた
当然メイカはそのテロ組織のことは知っていた。
かつて世界を恐怖に陥れた暴走コンピューターを崇めている団体であること。
そしてあまり世間では知られていないが。
その教祖――最高指導者であるイード·レイヴェンスクロフトは、今彼女が住んでいる
「こんな小さな町を襲うなんて酷いね」
メイカは
ロウルはそれを聞いて、間違ってはいないかもしれないと答えると、町の中を進んでいく。
「とりあえずメシにしようぜ。腹減ってんだろ? あと酒は飲めるか?」
「飲めるけどさ。いいの? ロウルさん、バイクじゃん。飲酒運転になっちゃうよ」
メイカの言葉を聞いたロウルは肩を揺らすと、前を進みながら返事をする
「メイカ。お前さん、意外と決まりを守るタイプなんだな」
「別にそんなんじゃないし。あたしはロウルさんのバイクでここまで来たんだから、飲酒を気にするに決まってんでしょ?」
ロウルはまた笑い始めると答える。
「大丈夫だって。
その話を聞いたメイカは、どういう原理で神具か自動操縦するのかを考えていると、ロウルの足が止まった。
「おーす、みんな元気でやってるか?」
そこはビニールシートを屋根にした簡易的な場所だった。
奥には急ごしらえの調理場が見え、テーブルや椅子が並んでいる。
そして他にも人が大勢いたが、メイカから見ると、とてもじゃないがレストランには見えなかった。
その店の客だと思われる者たちは年齢も性別もバラバラで、ロウルの姿を見るなり、嬉しそうに駆け寄ってくる。
メイカの住む里でもそうだったが、どうやら彼はここでも慕われているようだ。
当然世界的に有名なのだからと、メイカは思ったが、すぐにそれがロウルの人柄があってのものだと考えを改めた。
このモジャモジャ頭の中年は、なんだか妙に話が上手いのだ。
有名人なのに他人の話をよく聞き、無駄な助言などせずにニコニコと笑っている。
(そりゃ、誰からも好かれるよね……。あたしでさえそうも思ったもん……)
内心でそう呟いたメイカ。
それから彼女は、ロウルが手を振って来たので彼が座るテーブルの席に腰を下ろし、注文もせずに運ばれてきた料理――焼き飯を食べるのだった。
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