#409
ロウルはそう言うと指をパチンと鳴らす。
すると、何もないところから突然真っ黒なバイクのようなものが現れた。
それは、バイクとはいってもタイヤもなく、ロウルの側で宙に浮いてまま上下にゆっくりと揺れている。
メイカにはこのバイクのようなものが理解できない。
だが、この里に来てから
「こいつは
少年少女の呪いの集合体である神具である。
さらに瞬間移動も可能で、特殊な結界――
今から数年前にある秘境へと足を運んだロウルは、この単車になった神具の啓示を受け、
ロウルは今までのメイカの暴言などなかったかのように振る舞い、自分の神具である
「ほら、なに
「え……? 乗れって……」
ロウルは
そして、そのままバイクは空へと飛び上がっていく。
当然のことながら、今まで空を飛んだことなどないメイカはあり得ない状況に驚くしかなかった。
「しっかり捕まってろよ。落ちたら死ぬからな」
笑顔でそう言ったロウルは、メイカが自分の身体にしがみついたことを確認する。
そして、
メイカが先ほどまで眺めていた景色――晴々とした青空の中を走る
下に見える緑の木々や里が小さくなり。
目の前に見える白い雲に触れながら。
メイカは憂鬱な気分が晴れていくのを感じていた。
しかし、そんな気分が長く続くわけもなく。
彼女は鬱屈した表情に戻ると、ロウルの背中にしがみついているだけだった。
「やっぱ空はいいよな。いつ飛んでも気分が晴れる」
ロウルは返事をしないメイカへ言葉を続ける。
「そうだ、メイカ。お前さんは海に行ったことはあるか? 海もいいぞ。この里の山と同じくらいたくさんの生き物がいて、そいつらがその景色の美しさと見事に調和しているんだ」
「……よくわかんないけど。てゆーか、今日会ったばかりで呼び捨てにすんの?」
「だってお前さんはメイカだろ? メイカ、う~んメイカ。良い名前じゃねぇか」
「……ロウルさんって、礼儀正しいんだがぶっきらぼうだかよくわかんないおっさんだね」
「おっさん言うな。これでもまだ気持ちは若いつもりだぞ。ま、若いつーか現役だって言いてぇんだがな」
「それってさ。ただ思春期が終わってないってだけじゃないの?」
「お前こそ今日会ったばかりでずいぶん言うじゃねぇかよッ!」
ロウルとくだらない会話を交わしているうちに――。
メイカは自分が笑っていることに気が付くのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます