#393

「ダブから手を放せッ!」


その光を纏った拳で殴り飛ばされたソウルミューが痛みに耐えながら叫ぶ。


倒れながらもブラスターハンドガンを構え、その銃口を突き付けている。


だが、バーバリーにとって彼は全く脅威ではないためか相手にしていない。


実際に再び攻撃をしてもソウルミューでは彼に歯が立たないだろう。


バーバリーはソウルミューのことなど無視して、ダブの捕まえて笑みを浮かべている。


何もできない自分を歯がゆく思っているソウルミュー。


玉砕覚悟でダブを助けようとしていたとき、女性の声が聞こえてくる。


《聞こえるか、ダブ》


それは機械化しかかっていたミウムの声だった。


だが、彼女のほうを見るとブライダルと共に倒れたままで、ソウルミューへ声をかけているようには見えなかった。


それでもソウルミューの頭の中には、彼女の言葉が流れ続ける。


《今こそお前が言っていたイケてるプランを実行するときだ》


「こ、こいつはなんだ? まさかミウムの奴も神具の力が使えるのか……?」


戸惑うソウルミューに、ミウムは細かいことなど気にせず、今はダブを助けることを――シストルムを取り戻すことを考えろと伝える。


《これからお前はバーバリーの奴の気を引くんだ。ダブにもお前のイケてるプランのことは伝えてある》


「プランってつったって、そんな状況じゃねぇだろ!? 第一ここには肝心のもんがねぇ!」


《それはこっちがなんとかする。いいからお前はプランを実行しろ》


ソウルミューがミウムの声を聞いている間――。


バーバリーは手で吊り上げたダブのことを見つめていた。


首を掴まれて持ち上げられているダブは、呻きながらもそんな彼をにらみ返している。


「ダブ·レイヴェンスクロフト……。お前の首は腐らないように加工し、生前の美しさを保ったまま我が師の前に突きつけてやる」


「バーバリー……。お父様を止めたいなら……僕たちの考えは同じだ。だったら今すぐに皆を解放してお互いに協力したほうがいい……」


「止めたい? 違うな。イード·レイヴェンスクロフトの考えはこの地球ほしを救うこと。それは私も一緒だ。ただ、私は人類を滅ぼすのではなく、優秀な人間のみを生き残らせ、この世界をやり直す。すべてが反対というわけではない」


「その優秀な人間っていうのは誰が決める?」


苦しそうに言うダブに、バーバリーは笑みを浮かべて答えた。


当然自分だと。


「私はすでに神となった。私はすべてを平等に見られる。貧しい者も裕福な者も分け隔てなく、男女や生まれの差別なく選別することができる」


「そんなのお前の独裁じゃないかッ! お父様と変わらないよッ!」


「頂点に立つ者は常に孤独……。我が師も同じだったのだろう。あなたに私の気持ちはわからん。これは。私に与えられた使命であり、試練なのだ!」


バーバリーはダブの首を掴んでいる手に力を込める。


「あなたに理解してもらえなかったのは残念だ。だが、心配するな。寂しくないように、あなたの家族もここにいる仲間もすぐにあの世に送ってやる。さらばだッ、ダブ·レイヴェンスクロフトッ!」


バーバリーがダブに止めを刺そうとしたその瞬間――。


基地内にあったスピーカーから大音量の音楽が流れ始めた。


軽快なイントロから始まり、シンプルなドラムとうねるベースが入って来る。


「なんだ! 誰がこんなふざけたものをッ!?」


バーバリーが周囲を見渡すと、倒れていたソウルミューが立ち上がっていた。


そして、彼はなんと音楽に合わせて腰をくねらせている。


「さあ、こっからダンスタイムだ! ドゥユーリメンバーッ!!」


突然踊りながら歌い出すソウルミューを見たバーバリーは、このバンダナを巻いた男は一体何をやっているんだと、唖然として立ち尽くしてしまっていた。

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