#385

侵入したところから廊下を抜け、広い通路へと出たソウルミューたちは、それぞれ武器を構えながら進んでいく。


「そういえばお前ら、ジェットパックは使えんだろうな? コントロールが結構難しいんだぞ」


「うん? たぶん大丈夫じゃない? だってあんたがあんだけ自在に使えてんだからさ」


ブライダルは、運動音痴そうなソウルミューが簡単そうにコントロールできていたのだから、自分やミウムなら問題ないだろうと返事をした。


その発言にムカッとしたソウルミューだったが、すぐに表情を戻して言う。


「いやいや、ブライダル君。君が思っているよりもずっとジェットパックのコントロールは難しいんだよ。ましてや初めての奴に使いこなせるほど簡単なもんじゃない。まあ、君らは運動神経良さそうだし、真っ直ぐ飛ぶくらいなら――」


「いや、ミウムは超簡単そうに飛んでるけど」


「えぇぇぇッ!?」


得意気に話し出し、いかにジェットパックの飛行コントロールが難しいかを説明しようとしていたソウルミュー。


だが、その目の前ではミウムがいとも簡単にジェットパックで空を飛びながら移動していた。


彼女はすぐにコツを掴んだのか、ジェットパックの推進剤に気を遣って、壁を蹴りながら飛んでいく。


「ま、まあ、ミウムは元軍人っぽいしぃ、ジェットパックじゃなくても飛行装置の経験がありそうだからなぁ。で、でも、まだまたオレのコントロールには及ばねぇよ」


「その台詞、なんかすっごく負け惜しみに聞こえるよ。よし、ここからなら通路も広くなってるね。私もいっちょやってみるか」


「気を付けろよ。初めての奴は大体天井に頭をぶつけるんだ」


経験者として、ソウルミューが偉そうにアドバイスをブライダルに送ったが、彼女もミウムと同じくらいジェットパックを巧みにコントロールし、いきなり宙で回転しながら楽しそうに飛んでいく。


そんなミウムとブライダルの背中を見ながら、ソウルミューは口を開いたまま立ち尽くしてしまっていた。


それは、彼が自分の手足のようにジェットパックをコントロールするのには、約一年くらいかかったからだ。


それなのに、あの白銀髪の女とポニーテールの少女は、初めてジェットパックを使用したというのにすでにソウルミューと並みにコントロールしてしまっている。


「理不尽だ……。やっぱ才能ってのはこの世の何よりも理不尽だ」


「いや、あのさソウルミュー。僕はとてもじゃないけど二人みたいにはできそうにないからコツを教えてほしいんだけど」


ガクッと肩を落としているソウルミューに、ダブがそう声をかける。


すると、ソウルミューはムクッと顔を上げて実に嬉しそうに口を開いた。


「しょうがないな~、ダブ。まあ、ちょっと飛んでみな。オレが支えててやるからさ」


「うん、ありがとう、ソウルミュー」


そして言葉通りに、ダブは、ソウルミューにフォローされながらジェットパックで飛んでいくのだった。

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