#365

物凄い形相で父親であるブルースに掴みかかろうとしたソウルミューだったが。


父の目の前には筋肉質の身体に法衣を纏った男が立っていた。


その顔には漆黒の化粧がほどこされており、美しくするというよりは相手を威嚇いかくするようなものに見える。


「バーバリー、お前か……」


ブルースはその漆黒の化粧をしている男の名を呼んだ。


その表情を見るに知り合いではあるが、とても友好的な関係には見えない。


燃えるハシエンダ背景にバーバリーと呼ばれた男が口を開く。


「神具は私がいただいていく」


「そう言われて渡すと思うか?」


ブルースはバーバリーのほうを向いたまま、抱いていたシストルムをソウルミューにへと渡した。


そして、両手の拳を握って身構える。


その両手の拳には、先ほどソウルミューとダブを爆発から守った光のオーラが現れていた。


ソウルミューは一体何が起きているのかわからないまま、シストルムを抱いて叫ぶ。


「おい、何なんだよお前はッ! 町をこんなにしたのはお前かッ!」


だが、バーバリーはソウルミューの問いには答えず、ブルースと同じように両手の拳から光を出した。


表情を歪めるソウルミューにブルースが答える。


「お前は神具を持って逃げろ。早くリズムを連れてこの町を出るんだ」


「さっきから何が起きてんだよッ! この猫が神具? 意味がわかんねぇッ!」


「いいから行けッ!」


ブルースが叫んだ瞬間に、バーバリーがソウルミューへと飛び掛かってきた。


光を放つ拳がシストルムを抱くソウルミューに向かって振り上げられたが、ブルースがそれを弾き返す。


父親の非科学的な力を見たソウルミューは激しく戸惑っていたが。


すぐに頭を切り替えて腰に収めていた二丁拳銃――ブラスターハンドガンの一つを持って、その銃口をバーバリーへと向けた。


「なに言ってやがる、こいつはぶっ殺せば解決なんだろ? お前らの手がなんで光ってんのわかんねぇけど、こいつはオレがやってやるよ」


「お前には無理だ! いいから逃げろと言っているだろうッ!」


「うるせぇッ!」


父親の制止を無視してソウルミューは、シストルムを肩に乗せてブラスターハンドガンを撃ちながらバーバリーへと向かっていった。


だが、放たれたビームが目の前のバーバリーを襲うが、その両手に現れている光によっていとも簡単に弾かれてしまう。


ソウルミューは何度もビームを撃つが、その光の壁を貫くことはできなかった。


「下がれソウルミューッ! お前には無理だッ!」


「邪魔だクソ親父! こんな奴にオレが負けるかッ!」


ソウルミューはブルースを突き飛ばして前へと駆けだした。


ブラスターを撃ちながら向かっていくか、バーバリーにはやはり通じない。


「そんな玩具おもちゃでは私は倒せんぞ」


そう言ったバーバリーが一歩踏み込むと、ソウルミューの距離が一気に縮まった。


そのあまりの速さで懐へと飛び込まれたソウルミューは反応ができない。


「ヤ、ヤベェ……」


「さらばだ、名も無き男よ」


そして、光の拳がソウルミューの身体へと突き出された。

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