#364
――ソウルミューとダブがブルースを追いかけている頃。
ブライダルとミウムはリズムと共に町中にいた。
ソウルミューの家が破壊されたように、ハシエンダのそこら中でも爆発が起きている状況だった。
「花火にしては被害が多過ぎないか?」
「これのどこが花火だよ! 爆撃だよ爆撃ッ! どっかのバカがこの町を襲ってるんだよッ!」
冷静に町を眺めているミウムに、ブライダルが当たり前の説明した。
そんな二人の傍でリズムは、ただ破壊されていく町を見て立ち尽くしてしまっている。
「お兄ちゃんとシストルムが心配だ……。早く行かなきゃ……」
リズムはそう呟くと突然走りだそうとした。
だが、それに気が付いたブライダルによってその小さな手を掴まれてしまう。
「こんな状況で動き回ったら危ないよ!」
ブライダルはすぐにでも町を出て、安全な場所へ行こうと彼女へ言った。
だが、リズムは兄と猫を置いていけないと返事をする。
その決意に満ちた表情に押され、兄と猫は自分が何とかするからリズムは逃げろとブライダルは声を張り上げた。
「というわけで~ミウム、この子のことは頼んだよ」
「それは問題ないが。珍しいな、お前が人助けとは」
「うっさい! いいからさっさと行けってのッ!」
ミウムはコクッと頷くとリズムを抱いて町の外へと駆けていった。
一人残ったブライダルは、表情を恐ろしいほど歪めながら叫ぶ。
「あぁッもうッ! 私は何をやってんだよッ! たかがネットで知り合った子供相手にぃぃぃッ!!! 私は自分だけが楽しめればいいキャラなのに! これじゃキャラクターが崩壊しちまってるじゃないかッ!!! ねえ、皆もそう思うよねッ!! ねえねえねえぇッ!!! これじゃまるで光落ちしたキャラだよッ!! 私は今激しく微妙な奴になっちゃってるぅぅぅッ!!!」
爆撃や破壊音、町人の悲鳴が聞こえる中、彼女の声はまるでそれらを打ち消すように響いていた。
そしてブライダルはリズムとの約束通りに、ソウルミューとシストルムがいる彼女の家へと向かった。
「全部あのクソ酔っ払いダメ兄貴のせいだッ! 見つけたら一発ぶん殴ってからリズムの前に連れていってやるッ!」
――怒りに満ち溢れたブライダルが町を走っているとき。
その対象にされているソウルミューは、ダブと共に町中を駆けていた。
破壊されていく町を見たソウルミューは、このことに父親であるブルースが関わっていると考える。
「あのクソ人でなしダメ親父が帰って来たらこれだ。絶対に奴がなんか問題を持ち込んだんだよッ!」
感情的に父を罵るソウルミューを見たダブは、そんな彼に弱々しく反論する。
「でも、さっき僕たちのことを助けてくれたよ」
「そんなの弾みだろ」
「そうかな……。君とお父さんの間に何があったかはわからないけど……僕はあの人は悪い人間じゃない気がする……。それと……さっき手から出していた光は……」
「あん? 光がどうした? 」
「実は……さっき君のお父さんが出した光はね」
「あぁぁぁッ! 見つけたぞクソ人でなしダメ親父ッ!」
走りながら訊ねたソウルミューだったが。
ブルースが立ち止まっている姿を目にすると、そちらに釘付けとなり、ダブの答えも聞かずに父親のほうへと行ってしまった。
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