#366

バーバリーの拳がソウルミューの身体を貫いたと思われたが。


そこへ飛び込んできたブルースによって彼は救われた。


だが、それと引き換えに、バーバリーの攻撃でブルースの腹部は貫かれてしまった。


「ぐはッ!」


「日頃の行いがよかったか、幸先いいな。いきなりお前を仕留められるとは」


不敵な笑みを浮かべたバーバリーへブルースは蹴りを放って後退させる。


ブルースは腹に空いた拳ほどの大きさの傷に、自分の光る手をかざした。


その効果か出血は止まり、傷口も塞がっていく。


だが、その顔に流れる汗を見るにかなり体力の消耗が激しいようだった。


先ほど飛ばされたソウルミューは地面に腰を付いて、自分を庇った父親が痛みに苦しんで姿を見ているしかなかった。


「な、なんだよ! そんなんでオレがお前を認めるとでも思ってんのかッ!?」


ソウルミューは、庇ってくれたブルースに礼を言うどころか、激しく非難した。


そして、再びブラスターハンドガンを構えた彼が立ち上がると、周囲には法衣を着た者たちが囲んでいた。


自動小銃の銃口がソウルミューとブルースへと向けられる。


動けない二人に向かってバーバリーが言う。


「神具をよこせ。そうすれば命だけは見逃してやる」


「何を言う。お前たちに神具は渡さん」


「そうだな。手負いとはいえお前から神具を奪うのは難しいだろう。だが、こいつを使えば簡単だ」


バーバリーはブルースの目の前で、ソウルミューの首を持って掲げた。


光をまとった手に首を抑えつけられたソウルミューは、苦しそうにしていて何もすることができない。


「こいつがお前にとって何者なのかはわからんし興味もないが。これ以上抵抗するならこいつを殺す」


バーバリーにそう言われたブルースは、手に纏っていた光を消して構えを解く。


それから自ら両手を上げる。


「わかった、やめてくれ……。神具は渡す」


「それでいい。では、約束通りこいつは殺さずに置いてやる。だが、お前は殺す」


バーバリーはソウルミューを地面に落とすと、彼の肩に乗っていたシストルムの首根っこを掴んだ。


そして、囲っていた集団に指示を出し、ブルースへの一斉射撃を命じた。


バーバリーが手を下ろせば、ブルースは即座にはちの巣にされてしまう状態だ。


その緊張感の中、一人の男がその中心へと入って来る。


「バーバリー……今すぐ止めろ」


それは左の頬に刺青の入った美少年――ダブだった。


ダブが前に立つと、バーバリーはその頭を下げた。


そして、その場で片膝を地面につく。


「ダブ様。この町にいたのですね。無事で何より、神具は今手に入れました」


「わかったよ。なら、この人たちにもこの町にも今すぐ攻撃を止めて立ち去るんだ」


「何故ですか?」


「いいから止めろ。僕は永遠なる破滅エターナル ルーイン最高指導者イード·レイヴェンスクロフトの息子……ダブ·レイヴェンスクロフトだぞ」


ダブの言葉にバーバリーは上げた顔を再び下げた。


そして立ち上がり、周囲にいた集団へ指示を出してすぐに撤退させる。


「では、ダブ様はこちらへ。おい、ブルース。ダブ様が慈悲深い方で助かったな。次にまた我々の邪魔をしようとしたら、そのときはその横の男と共に殺してやる」


「おい待てよ! ダブが永遠なる破滅エターナル ルーインのボスの息子だと!? よくわかんねぇけどダブと猫は連れて行かせねぇッ!」


バーバリーは去り際に、喚くソウルミューの顔面へ蹴りを入れて黙らせた。


ダブは気を失ったソウルミューを一瞥すると、そのまま永遠なる破滅エターナル ルーインの信者たちと共にその場を去って行った。

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