#309
暗部組織ビザールの本部である建物を出て地下を進むミウムとブレイク。
ミウムが歩を進めると土の壁が道をつくり、そして来た道をまたその土が埋めていく。
これでは追跡は不可能。
二人の脱走を追うことは誰であろうと無理だ。
ブレイクは改めてミウムの能力に驚いていた。
だが、あまり力を酷使すると彼女の中にあるマシ―ナリーウイルスが活発に動き出し、その身体に機械化が始まってしまう。
そのことを思い出したブレイクは心配になり、ミウムに声をかける。
「おい大丈夫なのか? そんなに力を使ってよ?」
「問題ない。ちゃんと計算している」
ミウムは相変わらず愛想なく返事をした。
後ろから彼女の姿を見たブレイクは、その身体に異常がないのを確認した。
歩くたびに揺れる豊かな胸と張りのある尻。
ミウムの女性としての身体のラインに、ブレイクは思わず顔を赤らめたが、たしかに機械化はしていないと安心する。
《おいミウム、気を付けろよ。ブレイクがイヤらしい目でお前の身体を見てるぞ》
「テメェなにいってんだよ!?」
ミウムの肩口に付いている人工知能――黒羊ルーツーがブレイクをからかうように言った。
ルーツーは慌てて否定する彼を見て二ヒヒと笑っている。
「別に構わん。見られて減るものでもないだろう」
《あのなぁミウム。減らないとはいってもお前の身体は青少年にとっちゃ毒みたいなもんなんだよ。魅力的とはいえ、胸と尻がデカ過ぎるのも考えもんだよな》
「そういうものなのか?」
ルーツーがいかにミウムの体が思春期の男に有害であるかを語ったが、彼女には理解できないようだ。
ブレイクはミウムたちの会話を変えたくもあって、彼女に聞きたかったことを訊ねる。
「おい、さっきのオレの妹が共和国を出るっていうのはどういうことだ?」
「私も詳しくはわからないが、お前の妹は帝国の者たちに連れられて国外へ行くと話していたぞ」
ミウムはラムブリオンの屋敷から逃げ出した後に、ブレイクの妹クリーンの様子を見に行っていたようだ。
彼女がいうには、クリーンは友人と思われる少女と共に、ストリング帝国の者たちと話していた。
ブレイクは考える。
クリーンの友人としてまず浮かぶのは、
まさかクリーンがベクターの言っていた、特殊な能力を持つすべての者を登録するという話を知ってバイオニクス共和国を出たのか。
たしかにジャズという帝国との伝手を使って国外へ行くことは難しくなさそうだが。
「心配しなくてもそんな大袈裟ものじゃなさそうだったぞ」
「テメェ……また心を読みやがったなッ!」
ミウムはPersonal link(パーソナルリンク)通称P-LINKと呼ばれるマシーナリーウイルスの適合者、
彼女の場合、どの適合者よりもその力が強いようで、その強力なテレパス(精神感応もしくは読心能力)で、他人の意識や記憶を操作することが可能。
だが、同じようにP-LINKを使用できる者を操ることはできない。
P-LINKの存在を知ったばかりのブレイクの心の中なら、顔を上げて空を見るくらいの感覚で考えていることがわかってしまう。
勝手に心を読まれて怒るブレイクに、ミウムは愛想なく返事をする。
「多分だが、ちょっとした課外授業的なものだろう。なんだか楽しそうにしていた」
「課外授業で帝国へ行くわけねぇだろ……」
顔をしかめたブレイクだったが、一先ずは安心できそうだと胸を
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